池田澄子

池田澄子（いけだ すみこ）

池田澄子は、1936年3月25日生まれの日本の女性俳人です。彼女の俳句は、日常生活における身近な出来事を、時にアイロニカルな視点で捉え、口語的な文体で表現することが特徴です。その作風は、親しみやすさの中に、生の孤独や戦争といった深いテーマを内包しており、幅広い読者の心を捉えています。

生い立ちと俳句との出会い

神奈川県鎌倉市で生まれた池田澄子は、父親の出征により新潟県村上市に疎開し、その後、結婚までを新潟市で過ごしました。新潟県立新潟中央高等学校を卒業後、38歳という比較的遅い時期に俳句を始めました。きっかけは、阿部完市の俳句に触れたことでした。この出会いが、彼女を俳句の世界へと導きました。

俳句活動

1975年、堀井鶏が主宰する俳句結社「群島」に入会し、俳人としての活動を本格化させました。その後、三橋敏雄に師事し、「檣の会」にも参加しました。また、「未定」「船団の会」といった俳句結社にも所属し、2020年には自ら「トイ」を創刊するなど、精力的に活動を続けています。2017年からは、岩波書店の総合誌「世界」の投句欄「岩波俳句」の選者を務めています。

作風と評価

池田澄子の俳句は、日常の些細な出来事や感情を、独特の言葉遣いとユーモアを交えて表現します。代表的な句として、「じゃんけんで負けて蛍に生まれたの」「ピーマン切って中を明るくしてあげた」「前ヘススメ前ヘススミテ還ラザル」などが挙げられます。これらの句からもわかるように、彼女の作品には、軽妙な語り口の中に、人生の深い洞察や社会に対する批評性が込められています。

現代俳句大賞の受賞概要では、「文語調・口語調を駆使した多彩な表現技法、エスプリを内包した独特の俳句世界を確立した」と評されています。また、「日常生活に根ざした題材の他、戦争や生死など重いテーマも取り上げ、深い俳境を示している」とも評価されています。その親しみやすい語り口は、多くの俳句愛好家を魅了しており、特に若い世代からの支持が厚いです。平易な言葉で書かれた評論にも定評があり、その活動は多岐にわたります。

受賞歴

池田澄子は、これまでに数々の賞を受賞しています。1989年には『空の庭』で現代俳句協会賞、2006年には『たましいの話』で宗左近俳句大賞を受賞。近年では、2021年に『此処』で読売文学賞詩歌俳句賞、現代俳句大賞、俳句四季大賞を受賞するなど、その活躍は目覚ましいものがあります。

主な著書

句集
『空の庭』（人間の科学社、1988年）
『いつしか人に生まれて』（みくに書房、1993年）
『ゆく舟』（ふらんす堂、2000年）
『たましいの話』（角川書店、2005年）
『拝復』（ふらんす堂、2011年）
『思ってます』（ふらんす堂、2016年）
『此処』（朔出版、2020年）
『月と書く』（朔出版、2023年）
選集など
『池田澄子句集』（ふらんす堂、1995年）
『自句自解ベスト100 池田澄子』（ふらんす堂、2010年）
その他
『休むに似たり』（評論集、ふらんす堂、2008年）
『あさがや草紙』（エッセイ集、角川学芸出版、2008年）
『兜太×澄子 - 兜太百句を読む』（金子兜太との対談、ふらんす堂、2011年）
『本当は逢いたし』（エッセイ集、日本経済新聞出版社、2021年）
『あの句この句　現代俳句の世界』（坪内稔典共著、創風社出版、2021年）
解説
『おめでとう』（川上弘美著、新潮文庫、2003年）

参考文献

池田澄子『現代俳句文庫29 池田澄子句集』（ふらんす堂、1995年）
川名大著『現代俳句（上）』（ちくま文庫、2001年）
「豈」51号「特集　池田澄子のすべて」（2011年）
「ユリイカ」2011年10月号「特集　現代俳句の新しい波」
坂口昌弘著『平成俳句の好敵手』（文學の森、2012年）
坪内稔典ほか編『池田澄子百句』（創風社出版、2014年）
「guca」Vol.2「特集　はじめての池田澄子」（2018年）

外部リンク

池田澄子氏インタビュー（恒信風）
* 池田澄子さん16000字インタビュー（週刊俳句）

池田澄子は、その独自の感性と表現力で、現代俳句の世界に新たな風を吹き込んでいる俳人と言えるでしょう。

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