汪興祖

汪興祖（おう こうそ、生年不詳 - 1371年）は、元末から明初にかけて活躍した軍人です。本貫は無為州巣県にあり、朱元璋に仕えて明の建国に大きく貢献しました。元々は汪姓でしたが、張徳勝の養子となったため、一時的に張興祖と名乗っていました。養父の張徳勝もまた、朱元璋の配下として勢力拡大に尽力しました。

生涯

汪興祖は、元末期に張徳勝の養子となり、張興祖と名を改めました。養父の張徳勝は、兪通海らと共に巣湖周辺を拠点としていました。至正15年（1355年）5月、張徳勝は兪通海らと共に朱元璋に帰順し、以後、朱元璋軍の重要な戦力として活躍しました。

至正20年（1360年）5月、采石での戦いで張徳勝が戦死すると、幼い実子・張宣に代わって、養子である張興祖がその職を継ぎました。至正21年（1361年）8月には、安慶・江州・蘄州・黄州を攻略し、さらに南昌も攻略しました。

至正23年（1363年）3月、安豊の救援に駆けつけ、張士誠軍を破りました。同年7月には、鄱陽湖の戦いに参加し、自ら6艘のうちの1艘に乗り込み、敵陣深く侵入して陳友諒軍の士気を低下させるという武功を挙げました。涇江口での伏兵戦でも活躍し、最大の功績を挙げたとして、湖広行省参政に抜擢されました。

至正24年（1364年）2月には武昌を攻略し、4月には兪通海と共に劉家港を奪い、通州を攻めました。この戦いで張士誠軍の院判朱瓊や元帥陳勝ら百余人を捕らえる戦果を挙げました。7月には廬州を攻略し、各地を転戦して通州に至った後、帰還しました。その後、大都督府僉事に進みました。

至正25年（1365年）10月、徐達に従って淮東を攻略し、至正26年（1366年）3月には淮東・浙西を攻略、同知大都督府事に昇進しました。

至正27年（1367年）10月、北伐に参加し、徐州を経由して沂州・青州を攻略。12月には東平を攻略し、元の平章馬徳を敗走させました。さらに、常守道と許乗を東阿へ進軍させ、元の参政陳璧ら5万余人を降伏させました。孔子の56世の孫である衍聖公の孔希学が曲阜知県の孔希挙や鄒県主簿孟思諒らを率いて降伏したため、興祖は彼らを礼遇しました。この対応により、兗東の州県が次々と降伏しました。その後、済寧へ進み、守将の陳乗を敗走させ、済南を攻略しました。

洪武元年（1368年）、都督兼右率府使に任命され、2月には楽安・汴梁を攻略し、4月には河南・洛陽を攻略しました。済寧に帰還してこれを守り、7月には徐達の召集に応じ、東昌で諸軍と合流しました。徐達に従い徳州へ向かい、常遇春と共に水軍を率いて大運河を進み、8月には元の首都である大都を攻略しました。その後、永平も攻略しました。

洪武2年（1369年）1月、常遇春に従って西進し、大同を攻略しました。この時、守将の竹貞を敗走させ、多数の兵を討ち取り、捕虜としました。張徳勝の実子である張宣が成長したため、張興祖は宣武衛指揮同知となり、姓を汪に戻し、汪興祖と名乗りました。その後、大同都督同知として大同を守りました。

洪武3年（1370年）2月、武州・朔州を攻略し、元の知院馬広らを捕らえました。兵を率いて大同の北口に至り、元軍に大勝し、ココ・テムルの弟である金剛奴ら4百余人を捕らえました。その後、晋王朱棡の武傅に任命され、山西行都督府僉事を兼ねました。

洪武4年（1371年）1月、征虜前将軍傅友徳と共に夏の討伐に参加。4月には階州・文州を攻略し、五里関へ進軍しました。五里関の戦いで、馬を躍らせて攻め入った際、飛石に当たり戦死しました。夏平定後、汪興祖の子に賞が贈られ、東勝侯と追封されました。

子の汪幼は張宣と同居していましたが、病没したため爵位は剥奪されました。

汪興祖は、明の建国において数々の戦で武功を挙げ、その功績は高く評価されています。彼の生涯は、明朝初期の激動の時代を象徴するものであり、軍人としての卓越した能力と、戦略的な判断力が際立っています。

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