沙耶のいる透視図

『沙耶のいる透視図』（さやのいるとうしず）は、伊達一行による同名の小説を原作とした1986年公開の日本映画です。1983年に発表された原作小説は、第6回すばる文学賞を受賞し、その生々しい性描写が大きな話題を呼びました。

ストーリー

本作は、ビニ本業界を舞台に、ビニ本カメラマンの橋口裕（名高達郎）、ビニ本編集者の神崎（土屋昌巳）、そしてビニ本モデルの沙耶（高樹沙耶）の三者による愛憎劇を描いています。欲望と嫉妬が入り混じる複雑な人間関係が、独特の映像美とともに展開されます。

キャスト

橋口裕：名高達郎
北村沙耶：高樹沙耶
神崎繁：土屋昌巳
神崎の母親：加賀まりこ
島みつる：山田辰夫
大野マコ：沢田和美
青山美恵：夕崎碧

スタッフ

監督：和泉聖治
製作：増田久雄
原作：伊達一行
脚本：石井隆
撮影：佐々木原保志
照明：金沢正夫
美術：小川富美夫
録音：瀬川徹夫
編集：大島ともよ
音楽：一柳慧
助監督：森谷晁育

製作の背景

原作の発表後、その衝撃的な内容から、多くの映画会社が映像化を希望しました。最終的に、増田久雄プロデューサーが代表を務めるプルミエ・インターナショナルが製作を、日本ヘラルド映画が配給を担当することになりました。増田プロデューサーは、池田敏春監督の『天使のはらわた 赤い淫画』で石井隆の脚本に感銘を受け、本作の脚色を依頼しました。奇しくも、『天使のはらわた 赤い淫画』もビニ本業界を舞台とした作品でした。撮影当時、スタッフは最年長でも39歳という若いチームで構成され、製作費は1億円でした。しかし、脚本は石井隆の意図とは異なる部分的な変更が加えられ、撮影日数はわずか18日という短い期間で敢行されました。

高樹沙耶は本作が映画初出演にして初主演となりました。モデルの仕事は失っても女優になりたいという強い意志を持ち、オーディションに合格しました。役柄上、ヌードやハードな演技が求められ、実際に本作出演をきっかけにモデルの仕事は無くなりました。彼女は役名を気に入り、芸名として使用しました（後に本名に改名）。

撮影は困難を極め、完成後も映画はお蔵入りとなってしまいました。しかし、高樹沙耶の二作目出演作である『チ・ン・ピ・ラ』が先に公開され、彼女が「オールナイトフジ」の司会に抜擢されるなど、人気が出たことがきっかけで、本作もヘラルド・エースの配給により、公開されることとなりました。本作の公開によって、高樹の芸名の由来が世間に知られることになりました。また、名高達郎も公開直前に元ミス日本との婚約を解消し、話題の人となっていました。

公開

映画は、三角寛が経営する東池袋の名画座・文芸坐の尽力によって、1986年10月、「埋もれた新作発掘ロードショー」の第一回作品として、文芸地下劇場で公開されました。

作品の評価

本作は、その独特の世界観と、出演者の熱演が評価され、第8回ヨコハマ映画祭では、撮影賞を佐々木原保志が（『南へ走れ、海の道を!』と併せて）、審査員特別賞を本作のスタッフが受賞しました。

ソフト状況

2002年7月にはDVDが発売されています。

外部リンク

沙耶のいる透視図 - allcinema
沙耶のいる透視図 - KINENOTE

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