沙鉢略可汗

沙鉢略可汗（イシュバラ・カガン）

沙鉢略可汗（? - 587年）は、突厥の可汗であり、本名は摂図（せつと）といいます。彼は、激動の時代に突厥を率い、隋との関係や内部対立に翻弄されながらも、その地位を維持しようと努めました。

生涯

摂図は、乙息記可汗の子として生まれました。父の死後、弟の燕都が木汗可汗として即位し、その後、木汗可汗の弟である他鉢可汗が即位しました。他鉢可汗は摂図を爾伏可汗とし、東面を統括させました。

581年、他鉢可汗が病死すると、子の菴羅が即位しますが、木汗可汗の子である大邏便がこれに不満を持ち、摂図に可汗位を譲りました。こうして摂図は、伊利倶盧設莫何始波羅可汗として正式に即位し、都斤山を都としました。彼は、大邏便に阿波可汗の称号を与えましたが、これが後の対立の火種となります。

隋が建国されると、沙鉢略可汗は北斉の残党と結託して隋に反乱を起こし、臨渝鎮を攻め落とすなど、隋の北辺を脅かしました。しかし、隋の反撃により敗走し、飢えと疫病に苦しめられ、撤退を余儀なくされました。

阿波可汗との対立も深刻化し、阿波可汗は西の達頭可汗のもとへ亡命し、達頭可汗の支援を受けて沙鉢略可汗を攻撃しました。これにより、貪汗可汗や地勤察なども離反し、沙鉢略可汗は苦境に立たされました。

窮地に陥った沙鉢略可汗は、隋に帰順を願い出て、臣と称して朝貢しました。隋の支援を得て、阿波可汗を捕えることに成功しましたが、西の達頭可汗や東の契丹の脅威に晒され、再び隋に救援を求め、白道川内に移り住むことを許されました。

585年、西域の阿抜国が挙兵し、沙鉢略可汗の部落を荒らしましたが、隋の援軍によって阿抜軍は敗走しました。

587年、沙鉢略可汗は死去し、遺言により弟の処羅侯が後を継ぎました。

妻子

沙鉢略可汗には、可賀敦（皇后）として大義公主（千金公主）がいました。彼女は北周の趙王宇文招の娘であり、後に楊姓を賜りました。

また、沙鉢略可汗には、雍虞閭（頡伽施多那都藍可汗）、欽羽設、染干（意利珍豆啓民可汗）、都速六といった息子たちがいました。

沙鉢略可汗の生涯は、突厥の分裂と衰退の時代を象徴しています。彼は、隋との関係や内部対立に翻弄されながらも、その地位を維持しようと努めましたが、最終的には西突厥の勢力に屈することとなりました。彼の治世は、突厥の歴史における重要な転換期であったと言えるでしょう。

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