沢田マンション

沢田 マンション：セルフビルドの驚異

高知県高知市薊野北町に位置する沢田マンションは、建築の専門知識を持たない沢田嘉農・裕江夫妻とその家族によって建てられた、他に類を見ない集合住宅です。その独特な外観と、増築を繰り返して形成された複雑な構造から、しばしば「日本の九龍城」と形容され、建築に関心のある人々にとって、その存在は特別なものとなっています。

建築の背景

沢田嘉農は、幼少期に見た集合住宅に憧れ、自らの手でアパートを建てることを夢見ていました。製材業を営んでいた彼は、大工や棟梁としての修行経験がないにも関わらず、独学で建築を学び、土建業を開始しました。その後、アパート経営に乗り出し、1971年には高知市薊野に土地を購入、沢田マンションの建設に着手しました。

驚異の建設プロセス

建設にあたり、嘉農はブルドーザーやパワーショベルを自ら操作し、基礎工事を行いました。設計図は頭の中にあったと言い、正式な図面がないまま、西から東へと増築を重ねていきました。鉄筋の配置からコンクリートの打ち込みまで、家族総出で行われ、小学生の娘もレッカー車を操作し、セメントを練る作業を手伝ったといいます。屋上にはクレーンや製材所も自作され、まさに手作りのマンションとして建設が進められました。

当初は10階建て、100戸という壮大な計画でしたが、最終的には地上5階建て、約70戸の集合住宅として完成しました。初期の頃は、母子家庭など経済的に困難な人々を優先的に受け入れていましたが、近年は若い世代の入居者が増えています。嘉農の死後は、増築は行われず、改修や補強によって現状が維持されています。

住居としての沢田 マンション

家賃は2万円から5万円程度で、部屋の広さや日当たり、設備状況によって異なります。部屋番号は入居順に割り振られているため、バラバラで、宅配業者を悩ませることもあります。一時、一般的なマンションのように番号が付けられましたが、住民に不評で元の番号に戻されました。

行政との関係

沢田マンションは、「違法建築」と呼ばれることもあります。建築確認申請が出されていないため、建築基準法に違反している状況です。しかし、私有財産権や住民の居住権の問題から、行政の指導も難しいのが現状です。現在では、住民による自主防災組織が結成され、年に一度の避難訓練が実施されるなど、行政との関係も良好なものとなっています。

沢田 マンションの歴史

1971年の建設開始から、沢田マンションは様々な変遷を辿ってきました。

1971年: 第1期工事開始
1972年: 基礎工事完了、1階部分入居開始
1973年: 第1期工事完了、スーパーマーケット開店
1975年: 屋上に畑を作成
1978年: 大型バスを購入
1985年: 第3期工事完了、ほぼ現在の規模となる
1992年: 5階の沢田家が全焼
1998年: プールから池に変更、ウィークリーマンション形式を開始
2002年: 公式Webサイト開設、沢田マンション祭り開催
2003年: 沢田嘉農死去
2006年: アロマテラピールーム、期間限定カフェ営業
2007年: 地下多目的ホール完成
2008年: 各種イベント開催、イタリアンカフェ開店
2009年: ギャラリーオープン
2011年: 沢田マンション祭り開催
2014年: ギャラリーで奈良美智のドローイングショー開催

沢田 マンションの魅力

沢田マンションは、その独特な構造と歴史から、多くの人々に興味を持たれています。建築関係者だけでなく、アーティストや写真家も訪れており、雑誌やテレビ番組でも取り上げられています。居住者によるイベントや交流も活発に行われ、コミュニティとしての魅力も持っています。

沢田 マンションの現在

現在も、多くの人々が生活する沢田マンションは、単なる集合住宅というだけでなく、建築とコミュニティが融合した独特な空間として存在しています。建築の専門家ではない家族が、手作りで築き上げてきたこの建物は、多くの人々に刺激と感動を与え続けています。

少人数自力建築の例

日本国内
「喫茶・大菩薩峠」
「かぐや姫竹御殿」
「蟻鱒鳶ル（アリマストンビル）」
日本国外
「シュヴァルの理想宮」
「ワッツ・タワー」
「グランマ・プリスブリーのボトルヴィレッジ」
* 「フスト大聖堂」

もう一度検索