河原崎長十郎 (4代目)

四代目 河原崎長十郎：波乱の生涯を辿る

四代目河原崎長十郎（1902年12月13日 - 1981年9月22日）は、東京の歌舞伎役者であり、劇団前進座の創設メンバーとして知られています。本名は河原崎虎之助。屋号は山崎屋、定紋は角違いに二つ巴、家紋は河原崎座櫓紋です。

劇団前進座での活躍

1931年に創設された劇団前進座において、長十郎は中心的な役割を果たしました。当初より幹事長（座頭）として劇団を牽引し、「演劇のデパート」と称される前進座で、歌舞伎だけでなく幅広いジャンルの演劇作品に出演しました。『勧進帳』の弁慶、『鳴神』の鳴神上人、『元禄忠臣蔵・御浜御殿』の徳川綱豊卿、『め組の喧嘩』の四つ車大八など、数々の当たり役を持ち、そのスケールの大きな芸風は、盟友である三代目中村翫右衛門との絶妙なコントラストを生み、多くの観客を魅了しました。

共産主義への傾倒

長十郎は、熱心な共産主義者としても知られています。1949年に前進座が日本共産党に集団入党した際、長十郎もその一員となりました。さらに、スターリンや毛沢東、文化大革命を積極的に支持するなど、その思想は非常に強く、前進座の舞台にも影響を与えました。しかし、その思想が原因で、歌舞伎に対して否定的な考えを持つようになり、1967年には毛沢東主義派として日本共産党を除名され、1968年には前進座からも除名されることとなります。

中国との交流と晩年

前進座除名後は、中国に関連する作品を日中で上演し、両国の友好に尽力しました。郭沫若の戯曲『屈原』や井上靖原作の『天平の甍』などが代表作です。しかし、歌舞伎を演じることはなく、1981年に78歳で心不全のため亡くなりました。

家系

長十郎は、歌舞伎界の名門の家に生まれました。祖父は河原崎座の座元であった六代目河原崎権之助、義理の伯父は九代目市川團十郎（成田屋）、父は八代目河原崎権之助です。また、兄に二代目河原崎権十郎、甥に三代目河原崎権三郎と三代目河原崎権十郎がいます。妻は女優の河原崎しづ江で、前進座の創設メンバーの一人です。長男は俳優の河原崎長一郎、次男は河原崎次郎、三男は河原崎建三と、息子たちも俳優として活躍しました。

年譜

1902年：東京新富町に生まれる
1905年：本名で初舞台
1912年：「片岡少年俳優養成所」に入所
1913年：四代目河原崎長十郎を襲名
1917年：父、八代目権之助死去
1918年：二代目市川左團次一座に加入
1925年：劇団「心座」を結成
1928年：二代目左團次一座としてソ連モスクワで歌舞伎公演
1930年：日本共産党員を自宅に匿っていたとして逮捕
1931年：劇団前進座設立
1933年：『勧進帳』の弁慶を初役で演じる
1936年：団員のしづ江と結婚
1937年：劇団の二代目幹事長に就任
1949年：座員と共に日本共産党に入党
1967年：日本共産党を除名される
1968年：劇団前進座を除名される
1972年：『屈原』を全国で上演開始
1981年：心不全のため死去

主な映画

長十郎は映画にも出演し、その演技力を発揮しました。

『段七しぐれ』
『清水次郎長』
『街の入墨者』
『河内山宗俊』
『戦国群盗伝』
『人情紙風船』
『大日向村』
『元禄忠臣蔵』
『宮本武蔵』
『どっこい生きてる』
『箱根風雲録』
『美女と怪龍』

著書

長十郎は著書も残しており、歌舞伎や演劇に対する深い知識と情熱を伝えています。

『勧進帳 付・上演台本』
『歌舞伎入門』
『ふりかえって前へ進む』
『メイクアップ』（共訳）

四代目河原崎長十郎は、歌舞伎役者としてだけでなく、一人の思想家、そして演劇人として、その生涯を通して多くの人々に影響を与えました。彼の功績は、日本の演劇史に深く刻まれています。

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