河合宏樹

河合 宏樹

河合 宏樹（かわい ひろき）は、1987年生まれ、東京都出身の日本の映画監督です。

経歴

武蔵野美術大学に在籍中、レオス・カラックス作品に触発され、自主映画制作を開始しました。芸術文化学科の卒業制作として手掛けた長編映画は優秀賞を獲得しています。

大学卒業後、レコード会社に勤務する傍ら、東日本大震災を経験しました。この震災を機に、福島県出身の小説家、古川日出男氏との出会いがありました。古川氏が管啓次郎、小島ケイタニーラブ、柴田元幸といった表現者たちと立ち上げた朗読劇「銀河鉄道の夜」の活動に参加。この経験が、東日本大震災の被災地で活動するミュージシャンやパフォーマーといった表現者たちに焦点を当てた映像制作へと繋がりました。この時期より、七尾旅人、飴屋法水、青葉市子、蓮沼執太など、多様なジャンルのアーティストたちとの交流を深めることとなります。

主な活動と作品

2014年には、朗読劇「銀河鉄道の夜」の活動に密着した初の長編ドキュメンタリー映画『ほんとうのうた〜朗読劇『銀河鉄道の夜』を追って〜』を発表。俳優の青柳いづみを主演に迎え、ユーロスペースでの上映を皮切りに、国内外で公開されました。

2016年には、ミュージシャンの七尾旅人が戦死した自衛官を演じた初のライブ映像作品「兵士 A」を制作。これは後に劇場用映画としても公開され、全国で上映されました。同年、後藤正文率いるGotch and The Good New Timesのライブ映像を監督・撮影し、『「Good New Times」at Billboard Live TOKYO』として発表。全編がYouTubeでも公開され、大きな反響を呼びました。

2017年には、飴屋法水と山下澄人の共同制作公演「コルバトントリ、」の映像作品を手掛けました。

2018年には、七里圭監督による「音から作る映画」シリーズの一本である『あなたはわたしじゃない』に撮影として参加。また、青葉市子初のライブ映像作品（アルバム『qp』初回限定盤DVD収録）や、Gotch & The Good New Timesのツアー映像作品を監督しています。

2019年には、テレビアニメ「電光超人グリッドマン」のオープニングテーマ、OxT「UNION」のミュージックビデオとそのメイキング映像を監督。このMVはYouTubeで900万回再生を突破するヒットとなりました。また、自身の祖父である日本舞踊家、藤間紋寿郎氏の晩年と沖縄戦の体験を題材に、七尾旅人の楽曲「蒼い魚」のドキュメンタリー風MVを制作しています。

2020年には、ろうの写真家、齋藤陽道氏の子育てを通じたコミュニケーションをテーマにしたドキュメンタリー映画『うたのはじまり』を公開。歌や音楽の字幕を絵画やコラージュで表現した「絵字幕」という斬新な手法で注目されましたが、新型コロナウイルスのパンデミックによる緊急事態宣言の影響で、多くの劇場が休館となり上映が中断されました。映画を届けたいという想いから、想田和弘監督が主宰するオンライン上映企画「仮設の映画館」に参加し、公開を継続しました。同年、クラムボンの原田郁子と徳澤青弦カルテットによるライブ映像作品も監督しています。

2021年、日本財団の企画による、多様性とファッションを描いたドキュメンタリー『True Colors FASHION 対話する衣服-6組の“当事者”との葛藤-』をオンラインで発表。ニューヨーク・フィルム・アワードでベストドキュメンタリー作品賞を受賞しました。また、小林エリカのテキストに基づき、戦前の女性労働者をテーマにした映像作品や、折坂悠太のツアーメイキング、折坂悠太と三浦大知の対談番組なども監督しています。

2022年には、コロナ禍における状況を捉えたYouTube作品『コロナ時代の銀河』が宮沢賢治奨励賞を受賞。ASIAN KUNG-FU GENERATION（アジカン）の結成25周年ライブフィルムや、古川日出男氏とアジカンメンバーとの対談映像なども手掛けました。

2024年、蓮沼執太フィルの公演映像を作品集として発表したほか、藤田貴大主宰のマームとジプシーによる沖縄戦を題材にした演劇作品「cocoon」の映像化、そして古川日出男、坂田明、向井秀徳が共演した朗読セッション「平家物語 諸行無常セッション」をライブ映画として公開。後者の上映では、ライブとライブ映像の本質を探求する試みとして、連日、作品上映後にトークイベントなどが開催され話題を呼びました。

河合宏樹氏は、ドキュメンタリーからライブ、演劇、ミュージックビデオに至るまで、幅広い形式で表現者の活動や社会的なテーマを捉え、多様なアプローチで映像作品を制作し続けています。

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