河野一之

河野一之の生涯

河野一之（こうの かずゆき）は、1907年8月2日に広島県で生まれ、2006年6月20日に98歳で亡くなった、日本の大蔵官僚、実業家です。東京府立四中、第一高等学校を経て、1930年に東京帝国大学法学部を卒業。同年大蔵省に入省しました。

大蔵官僚としての活躍

大蔵省入省後、河野は主に主計局でキャリアを積みます。1940年には主計局法規課長、1941年には決算課長に就任。太平洋戦争中は、陸軍司政官として南方軍軍政総監部付けでシンガポールに赴任し、占領地域の財政金融を担当しました。終戦後、大蔵省に復帰すると、財政破綻状態の中、1945年度予算の組み直し、GHQの費用負担、警察予備隊創設など、戦後復興期の財政処理に奔走しました。1948年には主計局長に就任し、1953年まで5年間務めました。これは戦後最長の記録です。その後、大蔵事務次官に就任し、官僚としての頂点を極めました。

実業家としての転身

1955年に大蔵省を退官した後、河野は実業家として新たな道を歩み始めます。まず、日本住宅公団の副総裁として、その立ち上げに尽力しました。その後、日本長期信用銀行の副頭取を経て、1963年には日本相互銀行（後の太陽銀行）の頭取に就任。外国為替業務ができないという問題を解決するため、普通銀行への転換を決意し、1968年に太陽銀行を設立しました。さらに、1973年には太陽神戸銀行の合併を実現させ、会長に就任。その後も、さくら銀行顧問、三井住友銀行顧問を務めるなど、金融業界で重きをなしました。

人物像

河野は、大蔵官僚として、また実業家として、常に冷静沈着で、合理的な判断を下す人物として知られていました。また、その人柄から多くの人々に慕われ、晩年まで経済界の長老として尊敬を集めました。同僚には、渡辺武（アジア開発銀行初代総裁）、小島宗高、内田常雄（自民党幹事長、経済企画庁長官、厚生大臣）などがいました。

晩年

晩年は、病院の同室の人に保険の知識を講義するなど、最後まで意欲的な姿勢を崩すことはありませんでした。2006年6月20日に肺炎のため98歳で亡くなりましたが、その功績は長く語り継がれています。

著書

河野は、その生涯において、以下の著書を執筆しました。

『財政雑話』（1950年）
『官庁会計実務要覧』（1951年）
『予算制度』（1952年）
『財経凹凸鏡』（1975年）
* 『私の履歴書』（1982年）

これらの著書は、当時の財政や金融に関する貴重な資料となっており、後世に多大な影響を与えました。

河野一之は、激動の時代を生き抜き、日本の経済発展に大きく貢献した人物です。彼の生涯と業績は、現代を生きる私たちにとって、多くの示唆を与えてくれます。

もう一度検索