法輪寺 (京都市西京区)

法輪寺：嵐山の歴史と信仰が息づく古刹

京都市西京区嵐山、名勝嵐山の山腹に位置する法輪寺は、真言宗五智教団に属する由緒ある寺院です。山号は智福山、本尊は虚空蔵菩薩で、古くから「嵯峨の虚空蔵さん」として親しまれ、陸奥国会津柳津の円蔵寺、伊勢国の朝熊山の金剛證寺とともに「日本三大虚空蔵」の一つに数えられています。

歴史と伝承：秦氏から空海まで

寺伝によれば、法輪寺の起源は古く、秦の始皇帝の子孫である秦氏が建てた葛野井宮に遡ります。和銅6年（713年）、行基が元明天皇の勅願により、国家安穏、五穀豊穣、産業の興隆を祈願して木上山葛井寺を建立したのが始まりとされています。その後、真言宗寺院として歴代天皇の勅願所となり、空海、弘法大師、覚鑁、明恵、日蓮など多くの高僧が参籠したと伝えられています。

天長6年（829年）、空海の弟子である道昌が虚空蔵菩薩像を安置したとされ、これが現在の本尊となっています。道昌はさらに大堰川の修築を行い、承和3年（836年）には法輪寺橋（後の渡月橋）を架け、参詣の道を整備しました。貞観10年（868年）には寺名を法輪寺と改め、貞観16年（874年）には山腹を切り開いて堂を改修、天慶年間（938年-947年）には空也による勧進によって新たな堂塔が建立されました。

応仁の乱（1467年）では戦火によって大きな被害を受け衰微しましたが、慶長2年（1597年）に後陽成天皇の勅願と前田利長の帰依を得て再建され、「智福山」の山号を賜りました。慶長11年（1607年）には盛大な落慶法要が執り行われました。その後も、禁門の変（1864年）で全焼するなど幾多の困難を経験しながらも、明治17年（1884年）に本堂を再建、大正3年（1914年）には復興を果たし、戦後には真言宗五智教団に所属しています。

信仰と行事：十三詣りと針供養

法輪寺は、知恵、芸事の上達、そして丑年・寅年生まれの守り本尊として信仰を集めています。『今昔物語集』『枕草子』『平家物語』などにもその名が登場し、古くから人々の篤い信仰を集めてきた歴史が窺えます。特に有名なのが「十三詣り」で、数え年で13歳になった男女が健康を祈願して参詣する行事です。旧暦3月13日（新暦の4月13日前後）と10月～11月に行われ、「知恵詣り」とも呼ばれています。渡月橋を渡るまで後ろを振り返らないという言い伝えも残されています。

また、2月8日と12月8日に行われる「針供養」も有名です。平安時代、清和天皇が廃針を納めた針堂を建立したという由緒にちなみ、針仕事の技術上達を祈願する行事として、全国から廃針が集められ、盛大に執り行われます。その他にも、芸能上達祈願祭（3月10日）、重陽の節句（9月9日）、獣魂法要など、様々な行事が行われています。

境内と文化財

法輪寺の境内には、本堂、大黒堂、客殿、庫裏、舞台（見晴台）、人形塚、収蔵庫、針供養塔、多宝塔、三重石塔、鐘楼、電電宮、稲荷社、電電塔、山門などがあります。舞台からは渡月橋や嵯峨野の美しい景色を一望できます。電電宮は電気・電波を守護する鎮守社として、電気・電子関係の仕事に携わる人々からの篤い信仰を集めています。

文化財としては、重要文化財に指定されている木造持国天・多聞天立像や、京都府指定歴史資料である法輪寺参詣曼荼羅などがあります。これらの文化財は、法輪寺の長い歴史と深い信仰を物語る貴重なものです。

アクセス

JR嵯峨野線、京福電気鉄道嵐山本線、阪急嵐山線、京都バス、京都市営バスなど、嵐山へのアクセスは良好です。それぞれの駅から徒歩でアクセス可能です。

法輪寺は、歴史、信仰、自然が融合した、嵐山を代表する寺院です。訪れる人々に、静寂と癒やし、そして歴史の重みを感じさせてくれるでしょう。

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