注連寺

注連寺（ちゅうれんじ）

注連寺は、山形県鶴岡市大網に位置する真言宗智山派の寺院です。この寺院は833年に空海（弘法大師）によって創建されたとされ、出羽三山の信仰の重要な拠点の一つとして知られています。さらに、戦後には一時新義真言宗湯殿山派の大本山として独立していたこともあります。寺の山号は「湯殿山」であり、本尊は大日如来です。

歴史的背景

注連寺は、湯殿山派に属する4ヶ寺の中で最も新しい寺院です。出羽三山神社では、出羽三山の開祖を蜂子皇子としていますが、注連寺では空海が湯殿山の開祖とされ、湯殿山と高野山が「対となる聖地」と位置付けられています。

歴史を振り返ると、天正9年から10年にかけて、最上義光は新庄を拠点に大宝寺氏との戦争を繰り広げていました。その間、前森氏による反乱が勃発し、義光の敵対勢力が尾浦城を包囲します。しかし、義氏の自害という悲劇的な結末が待っていました。この時、注連寺から持ち帰った三千仏の画像が慈恩寺に寄進されるなど、寺院の影響力が見て取れます。

江戸時代初期、注連寺は羽黒山の別当だった天宥によって天台宗への改宗を試みられましたが、湯殿山派の寺院は幕府に対して訴えを起こし、結束して湯殿真言を保護しました。1867年には、北海道の函館に注連寺の出張所が開設され、寺院の名は広く知られるようになります。

しかしながら、明治時代に神仏分離が進み、注連寺はその役割を失っていきました。その過程で周辺の宿坊や寺院も衰退し、注連寺は一時「破れ寺」となったのです。

再評価と文化遺産

1951年、作家の森敦が注連寺に滞在し、彼の体験を元にした小説『月山』が1974年に芥川賞を受賞しました。この作品は後に音楽や映画などのメディアへと展開し、注連寺への関心を再燃させました。代わって寺院はその姿を再構築し、現在に至るまで多くの人々が訪れる場所となっています。

現在の建物は明治時代に焼失した後、再建されたものです。2009年には、注連寺が『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』で二つ星に評価されるなど、その文化的価値が国際的にも認められるようになりました。また、寺内には村井石斎による「飛天の図」など多様な天井絵画があり、訪れる人々を魅了しています。

近年の出来事

2009年の2月から、近隣の七五三掛地区が大規模な地すべりに見舞われましたが、幸運にも注連寺自体には被害がありませんでした。地すべりの影響で、わずかに一世帯を残して住民が去ることとなりました。七五三掛集落は、映画『おくりびと』のロケ地としても知られています。

即身仏と森敦との繋がり

注連寺には鉄門海上人の即身仏が収められています。彼は1768年に生まれ、信仰の布教に尽力した人物であり、自ら即身仏になった背景には、民衆の苦しみを救う願いがあったと伝えられています。また、作家森敦の文学碑や文庫が設けられ、彼の業績を未来に残すための努力が続けられています。

交通案内

注連寺は山形県鶴岡市大網にあり、アクセスも便利です。車でのアクセスは、庄内空港から約45分、JR鶴岡駅からは約30分、さらに山形自動車道の庄内あさひICからはわずか15分の距離です。また、公共交通機関を利用する場合、JR鶴岡駅から「湯殿山行」のバスに乗り、大網で下車後、徒歩20分ほどで到着します。

寺名の由来と神仏習合

注連寺の「注連」とは、神道の祭具である注連縄に由来しています。境内の御神木には注連縄がかけられ、神域と現世を区切る役目を果たしています。出羽三山への参道口に位置する注連寺は、女性が立ち入れない「女人結界」の内側にありました。この由来は、寺の歴史と信仰の深い結びつきを示しています。

注連寺は、このような豊かな歴史と文化を持つ寺院として、多くの人々に愛されているのです。

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