泰緬戦争 (1765年-1767年)

泰緬戦争は、18世紀後半にビルマのコンバウン王朝とシャムのアユタヤ王朝との間で戦われた一連の軍事行動を指します。この紛争は、426年もの長きにわたり栄華を誇ったアユタヤ王朝を崩壊へと導いた決定的な出来事となりました。

戦端が開かれる前の1761年から1763年にかけて、アユタヤ朝はビルマ領であったチェンマイで起きた反乱や、テナセリム地方のダウェイに居住するモン族の蜂起を密かに支援していました。しかし、これらの動きはビルマ軍によってことごとく鎮圧されました。ビルマでは、兄であるナウンドージ王の死去に伴いシンビューシンが王位に就くと、シャムへの大規模な報復攻撃を決意します。1765年8月、ラーオ族やモン族、シャン族といった周辺民族から徴募した兵士を多数含む大軍を編成し、テナセリム方面とラーンナー方面の二方向からシャム領内へと侵攻を開始しました。

ビルマ軍は各地でシャム軍を打ち破り、順調に進軍を重ねました。しかし、占領地から兵員を補充するなど、その進軍は極めて慎重に進められました。また、ティハパテー将軍率いる部隊が、現在のシンブリー県に位置するバーンラチャン村で、村人たちによる頑強な抵抗に遭遇し、およそ5ヶ月もの間足止めを食らう事態も発生しました。こうした要因が重なり、ビルマ軍がアユタヤ王都を完全に包囲したのは、侵攻開始から一年が経過した1766年のことでした。

王都が包囲されると、シャム軍は城壁の外へ出撃し、包囲網を突破しようと試みましたが、平野部での戦闘で壊滅的な敗北を喫しました。しかし、アユタヤの城壁は非常に堅牢であり、ビルマ軍は雨季に入っても包囲を解くことなく攻防を続けました。この時期には、増水した川を利用した水上での戦闘も行われています。ビルマ側の総司令官であったマハノーラタが病に倒れ死去するという事態に見舞われましたが、ビルマ軍は依然として包囲を維持しました。

雨季が明けて乾季に入ると、ビルマ軍は城壁の周囲に盛り土を築き、そこから城壁を越えて王都内に砲撃を加える戦術に出ました。この頃、ビルマは北方から清朝の軍勢が侵攻してきたため、西方からのシャム攻撃と北方からの清への対応という二正面作戦を強いられていました。それでもアユタヤへの攻勢は緩みませんでした。1767年4月、ビルマ軍は城壁の地下にトンネルを掘り進め、そのトンネル内で火を放つことで城壁を破壊するという決定的な攻撃を敢行しました。崩れた城壁からビルマ軍は城内に殺到し、アユタヤの街は瞬く間に制圧されました。ビルマ軍は都市内で略奪の限りを尽くし、街を徹底的に破壊しました。多くの住民は捕虜として連行され、アユタヤ王朝はここに完全に終焉を迎えました。

アユタヤを陥落させたビルマ軍の主力部隊は、北方で展開されていた清軍との戦いに対応するため、速やかにアユタヤを離れて北へと向かいました。これにより、アユタヤ王朝の旧領内は一時的に権力の空白地帯となり、各地の有力者が独自に勢力を拡大する内乱状態となりました。こうした混乱の中、チャンタブリーを拠点としていたタークシンは、1767年11月にはビルマ軍が去った後のアユタヤの街を奪還します。そして、ビルマが清との戦いに忙殺されている隙を捉え、旧アユタヤ領内の各地を次々と平定していきました。1768年、旧領の統一をほぼ成し遂げたタークシンは王位に即位し、都をトンブリーに定めて新たな王朝、トンブリー王朝を樹立しました。泰緬戦争はアユタヤ王朝を滅亡させましたが、それは同時にタークシンによるシャム再興の幕開けでもあったのです。

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