シンブリー県

シンブリー県（จังหวัดสิงห์บุรี）

タイ王国の中部に位置するシンブリー県は、歴史と豊かな自然が調和する地域です。正式名称はタイ語で「จังหวัดสิงห์บุรี」と表記されます。この県は、北をナコーンサワン県とチャイナート県、東をロッブリー県、南をアーントーン県、そして西をスパンブリー県と接しており、タイ中央平原の中核をなす重要な地点の一つとなっています。

地理

シンブリー県の地形的な特徴は、その大部分が肥沃な平野で占められている点にあります。これは、タイを南北に縦断する主要な大河であるチャオプラヤー川が、長い年月をかけて運んできた土砂によって形成された沖積平野であるためです。チャオプラヤー川とその支流は、この地域に豊かな水資源をもたらし、古くから農業、特に米作が盛んに行われる基盤となってきました。広大で平坦な地形は、交通の要衝としても発展する要因となり、県内の移動や他県との物流を容易にしています。

歴史

シンブリーの地に人類が居住し、歴史が始まったのは非常に古く、タイ族が現在のタイ中部へと南下するよりもさらに以前に遡ることができます。考古学的な発見などから、少なくとも西暦6世紀頃から11世紀頃に栄えたと推定されているドヴァーラーヴァティー王朝の時代には、既にこの地域が重要な拠点であったと考えられています。

その後も、シンブリーは歴史の重要な舞台であり続けました。特に、14世紀から18世紀にかけてタイの中心として繁栄したアユタヤ王朝時代には、その地理的な位置が重視され、軍事的・経済的な要衝として大きな役割を果たしました。平野部を流れる河川は、当時の主要な交通路であり、シンブリーは物資の集積地や輸送拠点として繁栄したと推測されます。

近代に入り、タイが中央集権的な国家としての体制を強化していく中で、地方行政の再編が行われました。19世紀末、チャクリー王朝第5代国王であるラーマ5世（チュラロンコン大王）の治世下において、それまで独立した行政単位であったインブリー、プロムブリー、そしてシンブリーという三つの地域が統合されることが勅命により定められました。この統合を経て、現在のシンブリー県という単一の行政区画が成立し、今日に至っています。

行政区画

現在のシンブリー県は、基礎的な地方行政単位である郡（アンプー）によって組織されています。県内には合計6つの郡が設置されており、これらの郡が県の行政を分担しています。さらに、各郡はより小さな単位である町（タムボン）に細分化されており、シンブリー県全体では43の町が存在します。そして、最も末端のコミュニティ単位として、合計364の村（ムーバーン）が置かれ、県民の日常生活を支える基盤となっています。これらの行政区分は、県の規模や人口に応じて効率的な統治を行うために定められています。

シンブリー県は、古代からの歴史遺産と、チャオプラヤー川が育んだ豊かな自然、そして近代的な行政区分によって構成される、タイ中部地方の重要な一県です。その平野部という地理的特性は、古来より交通や農業の中心地としての役割をこの地域に与え続け、現在の県の姿を形作る基盤となっています。

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