津川辰珍

津川辰珍（つがわ たつうず）は、江戸時代初期の武士であり、豊前小倉藩、のちに肥後熊本藩の家臣として活躍しました。通称は「武衛系図」によると四郎右衛門とされています。

生涯

天正11年（1583年）、斯波義銀（津川義近）の三男として生まれました。父の義銀は、室町幕府の有力守護大名であった斯波氏の出身で、織田信長によって追放された後に信長に従い、名を津川義近と改めました。辰珍は、万治元年（1658年）に生涯を終えました。

辰珍には、姉に伊勢林藩主織田信重（織田信長の弟信包の子）の正室、兄に斯波大蔵（法性院殿、早世）、津川近利、弟に津川近治がいました。

斯波氏は室町幕府の三管領家の一つに数えられる有力な守護大名でしたが、戦国時代に衰退し、尾張国に逼塞していました。辰珍は、甥の津川近光（近元とも、通称は数馬）とともに小倉藩主細川氏に仕えました。

当初、辰珍は客分として1000石で迎えられましたが、細川氏が肥後54万石に移封されると、250石の加増を受けました。寛永9年（1632年）の「肥後御入国宿割帳」には、「千二百五十石 津川四郎右衛門」と「五百石 津川数馬」の名前が記されています。後に、甥の熊本藩士津田長相（三十郎）に700石を分知しました。

寛永15年（1638年）には、お茶湯料として飽託郡の岩戸山を拝領しました。寛永17年（1640年）には、藩主細川忠利が宮本武蔵や尾池義辰（足利道鑑）を山鹿温泉の御茶屋に客分として招いた際、儒学者朝山意林庵と共に辰珍も同席していたことが、令和4年（2022年）に発見された史料によって明らかになりました。この時、彼らは忠利が統治者としての人生を総括する相談相手として招かれたとされています。

諱について

諱である「辰珍」は、尾池義辰から偏諱を賜ったものと考えられています。尾池義辰は、辰珍より後に細川氏の客将となりましたが、斯波氏の本家筋にあたる足利将軍家の出身であり（足利義輝の子）、斯波氏で辰珍より前に「辰」の字を含む名前の者がいないことから、この推測は有力視されています。また、養子の辰房（近光の子）以降の当主も代々「辰」の字を通字としています。

まとめ

津川辰珍は、斯波氏という名門の血筋を受け継ぎながら、戦国時代の動乱を経て、細川家臣としてその才能を発揮しました。また、文化人との交流を通じて、藩政にも影響を与えた人物として、後世に語り継がれています。

参考文献

「武衛系図」（続群書類従　巻百十三　系図部八）
松本寿三郎「肥後細川家侍帳（一）」（1977年）

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