洲崎 (東京都)

洲崎（すさき）

洲崎は、現在の東京都江東区東陽一丁目に位置する旧町名です。元禄時代に埋め立てられた土地で、かつては「深川洲崎十万坪」と呼ばれ、海を望む風光明媚な場所でした。しかし、明治時代には遊郭が移転し、昭和初期まで都内有数の歓楽街として名を馳せました。

歴史

近世

江戸時代初期、江戸城への物資輸送のため、小名木川などの河川が整備され、その河口付近の湿地帯であった洲崎も開発されました。当初は満潮時に冠水する場所だったため、養魚場が発達しました。しかし、1791年には台風による高潮で大きな被害を受け、幕府は洲崎一帯での家屋建築を禁止しました。その後も養殖業は盛んに行われ、潮干狩りの名所としても発展しました。江戸後期には、東京湾を一望できる景勝地として、初日の出の名所として人気を集めました。

明治以降

1887年、東京帝国大学の校舎建設に伴い、近隣にあった根津遊郭が移転することになりました。その移転先として、1888年に深川洲崎遊郭が開業しました。その後、大火に見舞われることもありましたが、大正時代末期には吉原と並ぶ大規模な歓楽街として発展しました。しかし、第二次世界大戦の空襲により洲崎遊郭は閉鎖され、跡地は軍需工場となりました。戦後、遊郭は「洲崎パラダイス」として復活し、再び隆盛を極めましたが、1958年の売春防止法によりその歴史に幕を閉じました。その後、洲崎は静かな住宅街へと姿を変え、1967年には町名が変更され、現在の東陽一丁目となりました。

主な名所・遺構・キーワード

洲崎大門

洲崎遊郭の正面入り口に設置された門です。戦前は鉄の門柱でしたが、戦後には「洲崎パラダイス」の名が掲げられたアーチ形の門が設置されました。遊郭廃止に伴い、撤去されました。

洲崎橋

洲崎川にかかっていた橋で、洲崎大門が設置されていました。洲崎川は埋め立てられ、現在は洲崎川緑道公園となっています。橋の跡には記念碑が建てられています。

洲崎遊郭開始以来先亡者追善供養碑

洲崎遊郭の先亡者を弔う石碑です。洲崎三業組合が建立し、江東区の有形文化財に登録されています。

大賀楼

洲崎遊郭の中でも一等クラスの店でした。売春防止法施行後も建物が残っていましたが、東日本大震災で半倒壊し、解体されました。

東陽弁天町アーケード街

旧遊郭時代の建物を一部リフォームして使用している店があり、当時の面影を残していました。しかし、2016年に解体され、現在はその姿を見ることはできません。

洲崎弁天（洲崎神社）

洲崎の町名の由来となった神社です。元禄時代には桂昌院の守本尊であり、水難除けの神として地元漁民の信仰を集めました。関東大震災や東京大空襲で被害を受けましたが、戦後に復興しました。

波除碑

洲崎弁天の境内に立つ石碑で、1791年の津波の惨状を記録したものです。この碑は、洲崎一帯が津波対策のために居住禁止区域とされたことを示しています。

洲崎警察署

洲崎遊郭を管轄していた警察署です。東京大空襲で全職員が殉職したという悲劇的な歴史を持っています。

大門通り

洲崎遊郭の正面玄関から吉原遊郭へ続く道で、別名「親不孝通り」とも呼ばれました。現在もバス通りとしてその名が残っています。

洲崎球場

1936年に洲崎遊郭からやや離れた場所に設置された野球場です。しかし、水はけが悪く、冠水によるコールドゲームも発生したため、短期間で解体されました。

永井荷風

小説家の永井荷風は、著書「断腸亭日乗」などで戦前の洲崎遊郭の様子を記録しており、当時の風情を知ることができます。

小説「洲崎パラダイス」

芝木好子の短編小説で、洲崎遊郭で生きる遊女たちの姿を描いたものです。映画化もされています。

小説「忍ぶ川」

三浦哲郎の芥川賞受賞作で、洲崎を舞台にした男女の純愛を描いた物語です。映画化もされています。

武部申策

「洲崎の殿様」と呼ばれた人物で、洲崎弁天町に居を構え、日本の黒幕として様々な事件に関与しました。

参考文献

岡崎柾男『洲崎遊郭物語』（青蛙房、1988年、新装2013年）

関連項目

遊廓
赤線
吉原 ([[東京都)]]
辰巳の辻占
『忍ぶ川』
東京山手急行電鉄

外部リンク

* 『洲崎の栞』洲崎三業組合、1937

洲崎は、その歴史の中で、景勝地、遊郭、歓楽街、そして住宅街へと姿を変えてきました。その変遷は、東京の歴史を語る上で重要な一部であり、多くの人々の記憶に刻まれています。

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