流行性耳下腺炎

流行性耳下腺炎（おたふく風邪）

流行性耳下腺炎、一般におたふく風邪として知られるこのウイルス感染症は、ムンプスウイルスによって引き起こされます。1967年にワクチンが開発されるまでは、小児において広く流行した疾患で、現在でも開発途上国ではそのリスクが高い状況です。この病気には一定の季節性はなく、症状が出ない不顕性感染もありますが、成人が罹患すると重症化することがあります。

日本ではワクチン接種が任意で、接種率は約20%から30%とされています。そのため、初感染の年齢が高くなりつつあり、成人型のムンプスの合併症が増加しています。特に、突発性難聴を示す患者の中にはムンプス感染歴のある人も多く、その関連が注目されています。

症状

流行性耳下腺炎の主な症状は耳下腺の腫れです。通常、両側の耳下腺が同時に腫れますが、片側だけの腫れや、片側から始まりもう片側が腫れることもあります。顎下腺まで腫れることもあり、発症から12〜24時間以内に腫脹が認められます。この腫れは約3〜7日で消退しますが、場合によっては10日以上続くこともあります。

発熱は38〜39度で、通常は3〜5日続きますが、発熱のない例もあります。さらに、頭痛や咽頭痛、こめかみや顎の腫れが見られることがありますが、約30%の患者には腫れが見られないとされています。他にも無菌性髄膜炎や難聴、精巣炎といった合併症が報告されています。

原因

流行性耳下腺炎の原因はムンプスウイルスで、主に飛沫感染や接触感染によって広がります。特に2歳から12歳の子供に感染することが一般的ですが、大人でも感染することがあり、耳下腺だけでなく卵巣、睾丸、膵臓などにも影響することがあります。潜伏期間は通常12〜25日です。

診断

診断は身体検査によって唾液腺の腫脹を確認し、通常は臨床医が判断します。確定診断には血清学的テストが使われることが多いですが、RT-PCR法によってウイルスの遺伝子を特定することも可能です。類似症状を呈する他のウイルス性疾患と区別するため注意が必要です。

治療

流行性耳下腺炎には特異的な治療法は存在せず、対症療法が主な処置となります。首や腫れた部位の冷却や温熱療法は症状を緩和することがあります。また、鎮痛のためにアセトアミノフェンやイブプロフェンが使用されることがあります。水分摂取や適切な食事も重要です。

予防

ワクチン接種は重要な予防手段であり、多くの国ではMMRワクチン（麻しん・おたふく風邪・風しんの混合ワクチン）が定期的に接種されています。一方、日本ではおたふくかぜワクチンは任意接種とされており、その結果接種歴不明の成人が多く存在します。ワクチン接種後の抗体陽転率は高いものの、流行時には一定の感染例も見られるため、継続的な予防が求められます。

予後

流行性耳下腺炎の予後は一般的に良好で、耳下腺の腫れが収まれば感染力も失いますが、まれに高度難聴を伴うことがあります。また、男性の場合は不妊のリスクもありますが、頻度はあまり高くありません。

エピローグ

流行性耳下腺炎は一度感染すると通常は生涯にわたって免疫が形成されますが、再感染の報告もあることから、注意が必要です。

もう一度検索