浄厳

浄厳（じょうごん）

浄厳（1639年 - 1702年）は、江戸時代中期に活躍した真言宗の僧侶です。字は覚彦、号は妙極堂・三等子などを名乗りました。河内国（現在の大阪府）出身で、新安祥寺流の祖として知られています。ただし、浄厳自身が「如法真言律宗」という呼称を公式に採用したことから、真言律宗中興の祖として位置づけられることもあります。

生涯

寛永16年（1639年）に河内国錦部郡に生まれた浄厳は、慶安元年（1648年）に高野山で出家し、覚彦房雲農と名乗りました。万治元年（1658年）には、南院良意から安祥寺流の許可を得ています。延宝元年（1673年）に菩薩戒を受け、浄厳と改名しました。

その後、畿内を中心に盛んに講筵を開き、その教えを広めました。また、幕府の帰依を受け、元禄4年（1691年）には5代将軍徳川綱吉と柳沢吉保の援助によって、江戸湯島に霊雲寺を建立しました。以降、河内の延命寺と江戸の霊雲寺を拠点として活動しました。

浄厳は、『儀軌』の伝授や悉曇学の再興、庶民の教化に尽力し、近世真言宗の傑僧と評されています。彼の門下からは、蓮体、慧光、慈妙などの優れた弟子が育ちました。また、湛海や快円など、同時代の僧侶とも親交を持ち、儒学者の森尚謙も彼に師事しています。

現在、妙極院（東京都台東区）と延命寺（大阪府河内長野市）に浄厳の墓地があります。

主な著作

浄厳は、数多くの著作を残しており、その学識の深さと、真言宗に対する情熱が伺えます。代表的な著作として、以下のものが挙げられます。

悉曇三密鈔: 悉曇学に関する書籍で、契沖ら国学者の日本語音韻論に影響を与えました。
文選錦字録
諸真言要集
法華秘略要鈔
妙極堂遺稿: 詩文集
別行次第秘記: 真言宗の修行に関する詳細な解説書であり、大山公淳師をはじめ、現代の真言宗の思想に多大な影響を与えています。
随行一尊供養念誦要記
念珠略詮: 真言宗で用いられる念珠について、最も整理された内容となっています。
妙極堂教誡
真言行者初心修行作法
通用字輪口訣: 三密修行のうち、意密である字輪観について詳細に解説しています。
七支念誦随行法口訣
略念誦法口訣
真言修行大要鈔
弁惑指南: 真言宗に関する様々な疑義に対し、問答形式で回答したもので、特に禅宗批判は有名です。
受法最要

浄厳の研究

浄厳の研究は、仏教史、真言宗史の研究者によって進められています。 彼の著作は、真言宗の教義や歴史を理解する上で重要な資料であり、その思想は現代の真言宗にも大きな影響を与えています。

浄厳は、江戸時代中期における真言宗の復興に大きく貢献した人物であり、その功績は今日においても高く評価されています。

外部リンク

* 浄厳 - コトバンク

もう一度検索