浅い夢

来生たかお『浅い夢』 - デビューアルバムの軌跡

『浅い夢』は、1976年にリリースされた来生たかおの記念すべきファーストアルバムです。姉である来生えつこが全作詞を手掛け、来生たかおが作曲を担当。都会的で洗練された楽曲は、当時の音楽シーンに新たな風を吹き込みました。

制作の背景

収録曲は全て、デビュー前から姉弟でストックしていたもの。完成までに約2年の歳月を費やしました。フォークソングが主流だった時代に、来生の楽曲は都会的で垢抜けており、荒井由実からも高く評価されました。

当初、関係者からは30万枚のセールスを期待されていましたが、実際には6000枚にとどまりました。しかし、その音楽性の高さは色褪せることなく、現在も多くの音楽ファンに愛されています。

豪華な参加ミュージシャン

アレンジャーには、元ザ・モップスの星勝を迎え、高中正義、高橋ユキヒロ、小原玪、今井裕、後藤次利など、サディスティック・ミカ・バンドのメンバーが参加。さらに、安田裕美、大村憲二、是方博邦、斉藤伸雄、村上秀一、浜口茂外也など、豪華なスタジオミュージシャンが名を連ねています。

当初、ジャズピアニストの世良譲を交えて制作が進められていましたが、プロデューサーの意向により、星勝が中心となって編曲を担当することになりました。来生は、ドラムのフィルインまで譜面に書き記す星勝の才能に感銘を受けたと語っています。

ジャケットと井上陽水の評価

ジャケット写真は、ハリー・ニルソンのアルバムをイメージして撮影されました。井上陽水は、本アルバムを聴いた際、1曲目から来生の人柄に触れ、姉弟の調和、レコーディングスタッフの熱意、そして何より「生きていたのがとてもうれしく感じられた」と述べています。小林武史も自選の名盤として挙げています。

先行シングル「浅い夢」

アルバムに先駆けてリリースされたシングル「浅い夢」は、福井峻が編曲を担当。アルバムに収録されているものとはミックスが異なっています。来生えつこが敬愛する吉行淳之介の小説からタイトルが取られており、来生自身も短編集に同名小説を収録しています。メロディーは来生が19歳の頃に作曲したもので、レナード・バーンスタインの「Somewhere」がモチーフになっています。コンサートでは定番曲として親しまれ、多くの歌手によってカバーされています。

収録曲について

収録曲は、「浅い夢」のほか、「赤毛の隣人」「晴れのち曇り」「痛手」「雑踏」「悪い夜」「待ち人来たらず」「ボートの二人」「夏まどい」「不幸色のまなざし」など、全10曲。

来生えつこの描く都会的な歌詞と、来生たかおの繊細なメロディーが織りなす世界観は、聴く人の心を深く捉えます。

復刻盤

『浅い夢』は、1986年、1991年、1995年、2007年にCDとして復刻されています。

1995年版は、高城賢によるデジタルリマスターが施され、より高音質なサウンドで楽しむことができます。

まとめ

来生たかおのデビューアルバム『浅い夢』は、時代を超えて愛される名盤です。都会的で洗練された楽曲、豪華な参加ミュージシャン、そして来生姉弟の才能が凝縮された本作を、ぜひ一度聴いてみてください。

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