浜村美智子

浜村美智子（はまむら みちこ）は、1937年10月3日生まれ、鹿児島県出身の日本の歌手です。大阪で育ち、中学校卒業後に上京。高校在学中にモデルとして活動していた彼女は、あるきっかけからビクターエンタテインメントによって歌手として見出されます。

「カリプソの娘」としての鮮烈なデビュー

ビクターは、当時世界的にヒットしていたハリー・ベラフォンテの楽曲『バナナ・ボート』を日本でカバーするにあたり、その雰囲気に合う新しいタレントを探していました。歌手経験はなかった浜村美智子でしたが、その個性的な魅力が楽曲イメージに合致すると判断され、「カリプソの娘」として白羽の矢が立ちます。これは、現代でいうところのキャンペーンガール的な位置づけの走りとも言える抜擢でした。

1957年、『バナナ・ボート』でレコードデビューを果たした浜村美智子は、黄色く脱色したロングヘアーに濃いアイシャドー、そして縁取られた唇という独特の「カリプソ・スタイル」で強い印象を与えます。この楽曲は江利チエミをはじめ複数の歌手が競作としてリリースしていましたが、浜村盤は発売直後から突出した売上を見せ、わずか1ヶ月あまりで18万枚を記録。最終的には30万枚、累計ではミリオンセラーに達したとも言われています。

奔放な個性とメディアへの影響

『バナナ・ボート』のメガヒットにより、浜村美智子は一躍時の人となり、メディアに頻繁に登場するようになります。その中で、彼女はインタビューなどで「カリプソはあまり好きではなく、自分はジャズの方が好みだ」といった飾らない、あるいは型破りとも言える発言を連発し、その奔放で自由なキャラクターがさらけ出されました。しかし、カリブの民謡であるカリプソの持つおおらかなイメージと、浜村の持つおおらかで少し「いい加減」とも取れる個性が図らずも調和し、結果的に競合を抑えて大きな成功を収める要因となったと考えられています。

同年、彼女は第8回NHK紅白歌合戦への出場も果たしました。『バナナ・ボート』に続き、『カリプソ娘』などカリプソ色の強い楽曲を発表する一方、当時の日本人歌手としては珍しくアメリカでのレコーディングも経験しています。また、1960年にハリー・ベラフォンテが初来日した際には、空港に多くの報道陣と共に駆けつけています。

デビュー当初、その圧倒的な人気から美空ひばり、江利チエミ、雪村いづみといった「三人娘」の後継者として期待する声もありましたが、あまりにも「バナナ・ボート」と「カリプソ・スタイル」、そして浜村自身のキャラクターの印象が強烈すぎたため、カリプソブームの終焉と共にその人気は次第に落ち着いていきました。

引退、復帰、そして再びのヒット

1963年、プロボクシング東洋ライト級チャンピオンであった小坂照男との結婚を機に、浜村美智子はいったん芸能活動から身を引きます。しかし、1965年にはフジテレビ系の特撮ドラマ『忍者部隊月光』に悪の組織の女性幹部役で出演し、女優として復帰。その後、1972年にNHKの『思い出のメロディー』への出演をきっかけに歌手活動を再開します。

この歌手復帰を機にリリースされた楽曲『黄色いシャツ』が再び脚光を浴び、オリコンシングルチャートにも登場するヒットとなります。この歌は韓国人歌手、孫夕友の歌唱で知られる『黄色いシャツの男』の日本語カバーであり、このヒットを受けて浜村美智子は韓国の大韓放送協会に招かれ、韓国で生放送番組に出演した最初の外国人という記録を作りました。

現在も、浜村美智子はその持ち味であるラテンやシャンソンを中心に、ダンスパーティーやディナーショーなどのステージで精力的に歌声を披露し、多くのファンを魅了し続けています。

主な音楽作品

シングル

バナナ・ボート (1957)
ダーク・ムーン／カリプソ娘 (1957)
島の女／ママはブーブー (1957)
パラダイス／これが恋かしら (1957) - アメリカ録音
黄色いシャツ (1972)
バナナ・ボート (再録)／酒 (1973)

アルバム

夜のラテン (1961)
バナナボート (1973)

主な出演

映画: ジャズ娘に栄光あれ (1958)、大当り狸御殿 (1958)、明日は明日の風が吹く (1958, 石原裕次郎と共演) 他
テレビドラマ: 忍者部隊月光 (1965, M三号役) 他
テレビ歌番組: NHK紅白歌合戦 (第8回), 思い出のメロディー, NHK歌謡コンサート 他
テレビバラエティ: 徹子の部屋 (2016) 他

これらの活動を通じて、浜村美智子は日本の芸能史において、カリプソブームの象徴として、そして時代を超えて歌い続ける個性派歌手として確固たる地位を築いています。

もう一度検索