浜松市自主運行バス

浜松市自主運行バスは、静岡県浜松市が主体となり、市民の身近な移動手段として提供するバスサービスの総称です。これは、かつて市が直接運営していた浜松市営バス（1986年まで存在）とは異なり、既存のバス路線が廃止された際の代替手段や、地域内の新たな交通手段として、運行業務を民間のバス会社やタクシー会社に委託する形で成り立っています。この委託方式により、地域のニーズに合わせた柔軟な運行が可能となっています。

概要

運行業務を担うのは、遠州鉄道や浜松バスといった既存の路線バス事業者に加え、乗合バス事業許可を持つ遠鉄タクシーや水窪タクシーなどのタクシー会社です。過去には遠鉄アシストや秋葉バスサービスが受託していた路線もありました。

2005年 7月の周辺市町村編入により、合併前の各自治体が独自に運行していた自主運行バスの多くが浜松市に引き継がれました。これにより、サービスの提供エリアが大幅に広がっています。

運賃制度については変遷があり、2010年10月まで無料だった路線も含め、現在は全路線が有料です。有料化当初は距離に応じた対キロ運賃制と定額の均一運賃制が混在していましたが、現在は主に距離制運賃が採用されており、均一運賃の路線は廃止されています。また、支払いは原則として降車時の後払いですが、一部例外も存在します。

廃止された主な路線

かつては、浜松駅を中心に市街地を循環する「浜松市循環まちバスく・る・る」が運行されていました。遠州鉄道に運行を委託しており、同社が発行する乗車券類（ナイスパス、ワイドフリー定期券など）や専用一日乗車券が利用可能でした。運賃は当初1乗車100円均一の後払いでしたが、後に一日乗り放題200円均一の先払いに変更されました。2019年3月31日に全線が廃止されています。

現在運行中の路線

市内各地域で様々な形態の自主運行バスが運行されています。ここでは、旧行政区に基づいた主な路線を紹介します。

中央区・浜名区（旧区分）

多くの路線で区間別距離制運賃が採用されており、初乗り運賃は大人200円、小人100円が基本です。決済方法として、ナイスパスやPayPayが利用可能な路線もあります。

浜松北地域バス「にこにこバス」: 旧都田線の代替機能を持ち、聖隷三方原病院などと都田地域を結びます。遠鉄タクシーがワゴン車で運行。かつては遠州鉄道が運行していました。
浜北地域バス「浜北コミュニティバス」: 大平堀谷線、北浜麁玉線、赤佐中瀬線など複数のルートを持ちます。浜松バスが距離制運賃で運行し、ワゴン車や小型バスが使用されます。
細江地域バス「みをつくしバス｣: 事前登録・予約が必要なデマンド運行バスです。月曜日と水曜日に細江地域全域をカバーしています。遠鉄タクシーがワゴン車で運行。かつては遠州鉄道が運行していました。
引佐地域バス「いなさみどりバス」: 「つつじ線」と「なおとら線」があります。つつじ線は予約が必要ですが事前登録は不要です。なおとら線は事前登録・予約が必要なデマンド運行です。いずれも遠鉄タクシーが運行。
三ヶ日地域バス「三ヶ日オレンジふれあいバス」: 南線、北線、北線（スクール系統）があります。浜松バスが運行し、PayPayが利用可能です。過去には遠州鉄道や遠鉄タクシーが運行していました。日野・ポンチョなどの車両が使われています。

天竜区（旧区分）

多くの路線が遠鉄タクシーに委託されており、原則として事前予約制のデマンド運行となっています（春野ふれあいバスの一部午前の便を除く）。運賃制度は路線により異なり、距離制運賃が中心です。

春野ふれあいバス: 杉・川上線、熊切線など複数の路線があり、週ごとに運行曜日が設定されています。デマンド運行が基本ですが、一部便は予約不要です。かつて春野町が運行していた「100円バス」を引き継いだものです。
龍山ふれあいバス: 白倉線、大嶺線などがあり、週ごとに運行曜日が異なります。2019年より全便デマンド運行となりました。旧龍山村の有償バスをルーツとします。
天竜ふれあいバス: 熊線、大白木線、阿多古線など多くの路線を持ち、2019年10月より全便デマンド運行です。かつて遠州鉄道が運行していた路線の一部を引き継ぎ、天竜市営バスなどとも統合されています。阿多古線は大型バスでの運行からワゴン車でのデマンド運行に移行した例です。
北遠本線: 西鹿島駅と水窪町を結ぶ基幹路線で、2019年10月1日に遠州鉄道の直営路線から浜松市自主運行バスに移管されました。水窪タクシーが中型バスで運行しています。
水窪ふれあいバス: 白倉線、池島線、門桁線などがあり、2019年10月より全便デマンド運行です。水窪タクシーが運行。旧水窪町の町営バスや患者バスを統合したものです。
佐久間ふれあいバス: 歴史と民話の郷会館、中部天竜駅、佐久間病院を中心に各方面へ運行。原則平日運行ですが、土曜の一部便や特定イベント時には運行があります。2010年に無料の福祉バス・医療バスを有料化、2013年には遠州鉄道が運行していた佐久間線を統合しました。デマンド運行区間もあります。

沿革

1986年12月：浜松市交通部（市営バス）の事業が遠州鉄道に移管される。
2002年4月：「く・る・る」本格運行開始。
2005年 7月：周辺市町村との合併により、各自治体の自主運行バスを浜松市が引き継ぐ。
2010年10月：無料だった自主運行バスがすべて有料化。細江地域バス「みをつくしバス」運行開始。春野100円バスを春野ふれあいバスに改称。
2011年10月：自家用有償バスとしての運行を廃止し、龍山ふれあいバスを運行開始。
2012年1月：三ヶ日地域の自主運行バス・巡回バスを「三ヶ日オレンジふれあいバス」に再編。
2014年10月：「にこにこバス」「みをつくしバス」の委託先が遠州鉄道から遠鉄タクシーに変更。
2019年3月：「く・る・る」が廃止。
2019年10月：北遠本線を遠州鉄道から浜松市自主運行バスに移管（水窪タクシー委託）。天竜、龍山、水窪の各ふれあいバスが全便デマンド化。阿多古線もデマンド化され、委託先が遠州鉄道から遠鉄タクシーに変更される。

浜松市自主運行バスは、地域の高齢化や過疎化が進む中でも、市民の移動手段を確保するために重要な役割を担っています。デマンド運行の導入など、時代の変化に合わせた柔軟なサービス提供が続けられています。

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