浪漫 (鉄道車両)

浪漫（ろまん）

「浪漫」は、東日本旅客鉄道（JR東日本）が1995年（平成7年）から2007年（平成19年）にかけて保有・運用した鉄道車両で、特別な改造が施された客車によるジョイフルトレインの一種です。

登場の背景と改造

長野支社では、かねてより12系客車から改造された和式客車である「白樺」を、臨時列車や団体列車といった波動輸送用として運用していました。しかし、「白樺」の老朽化が進み、車内設備の陳腐化も顕著になったため、その後継となる新たな和式客車として開発されたのがこの「浪漫」です。

改造は1995年11月、長野総合車両所（現在の長野総合車両センター）にて、種車として14系客車が選ばれ実施されました。改造にあたっては、「女性や高齢者の方々にも扱いやすいお座敷列車であり、一度乗ったら『また乗りたい』と感じさせるような列車」を目指すという明確なコンセプトが掲げられました。

車体構造は種車のものを基本的に活用しており、分散式の冷房装置（AU13A形）が各車に5基ずつ搭載されていた点や、台車（オロ14形にはTR217C形、スロフ14形にはTR217D形）などもそのまま引き継がれています。客室内をお座敷仕様とするため、一部の窓や客用扉が埋め込まれるなどの変更が加えられました。また、設備の充実に伴い、種車の普通車からグリーン車へと等級が変更され、それに合わせて車両番号も800番台に改番されました。

改番対象と内容は以下の通りです。

スハフ14 17・18 → スロフ14 801・802
オハ14 61・64・65・67 → オロ14 801 - 804

かつて国鉄時代に存在したお座敷列車「みやび」と改番後の車両番号が完全に重複していましたが、「浪漫」が登場したのは「みやび」が既に廃車された後のため、運用上の問題は生じませんでした。

登場時の外装塗装は、上品なブラスゴールドを基調とし、側窓の上下にはロイヤルブルーがあしらわれました。しかし、2000年（平成12年）に畳や内装ファブリックの交換を主とするリフレッシュ工事が施工された際、塗装も変更され、メタリックゴールドと深みのあるワインレッドの配色となりました。

編成と車両詳細

「浪漫」は基本的に6両編成で組成されました。編成の両端となる1号車と6号車、および中間車の4号車には、車両側面に特徴的なロゴマークが配されていました。また、リニューアル工事が行われる前の2000年以前は、夜間運行時に通常座席での休憩を目的とした増結用車両として、オハ14 62が本系列と同様の塗装に施され、編成の中間に組み込まれることもありました。

各車両には以下のような特徴がありました。

スロフ14 801（1号車）・スロフ14 802（6号車）
編成の端に連結される展望室付き車両です。運転室側連結面を編成内側に向けており、元トイレ・洗面所・出入口があった部分に新設された展望室は、前面と側面を合計11枚の平面ガラスで囲み、ソファーやテーブルが配置された間接照明のフリースペースとなっていました。展望室下部にはスカートが装備されています。床下には、青函トンネルや関門トンネルの通過にも対応する自動消火装置付きの発電用ディーゼルエンジン（DMF15HZ-G形）と発電機（DM93形）を搭載し、編成全体に電力を供給していました。客室はお座敷仕様で収納式の掘りごたつを採用。床面を200mm高くした浮床構造の畳敷きに机と椅子を配置し、掘りごたつの底部にはパネルヒーターが取り付けられていました。掘りごたつ内部には机と椅子を収納でき、蓋をすれば完全にフラットな床面になるため、定員の調整が可能でした。通路部にも跳ね上げ式の畳が設置されています。この他、添乗員室、更衣室、レーザーカラオケ装置、28インチCRTモニター、冷蔵ショーケース、スリッパ入れ、収納庫、避難はしごなどの設備を備えていました。

オロ14 801（2号車）・オロ14 804（5号車）
中間のお座敷車両です。客室は前述のスロフ14形と同様の掘りごたつが採用されています。客室仕切り部には28インチCRTモニターやAV機器、カラオケ装置が設置されており、側窓には障子が取り付けられ和の雰囲気を高めていました。トイレは種車のものを改装した和式でした。種車にあった片側2扉の出入口は1扉となり、封鎖された部分には流し台と冷蔵ショーケースが設置されていました。

オロ14 802（3号車）
基本的仕様はオロ14 801・804と同様の中間お座敷車両ですが、トイレが前述の2両が和式であるのに対し、本車両は洋式トイレに交換されていました。また、種車の洗面所部分に男子用小トイレを新設したため、洗面所は出入口横のスペースに新たに設けられました。

オロ14 803（4号車）
ラウンジカーとして運用されました。他の客室が畳敷きであるのに対し、この車両は一面じゅうたん敷きとなっていました。車両の前位側にミーティングルーム、中央部にはゆったりとした多目的ラウンジが配置されていました。後位側には客用扉を挟んでトイレ、洗面所、カード式公衆電話、添乗員室兼更衣室などの設備が集約されています。多目的ラウンジ部分の側窓は、種車から下方に100mm拡大されており、優れた眺望が楽しめました。

運用と終焉

「浪漫」は1995年11月17日から営業運転を開始しました。落成後から廃車まで一貫して長野総合車両センターに所属し、主に長野支社管内の臨時列車や団体列車として運用されたほか、JR東日本管内の他支社への貸し出しも頻繁に行われました。その活躍範囲は広く、JR東日本管内のみならず、北は北海道の石北本線網走まで、南は日豊本線を経由して鹿児島本線の鹿児島中央まで乗り入れた実績があります。このほかにも、北陸本線、高山本線、紀勢本線、参宮線など、全国各地の非電化・電化区間を問わず入線しました。また、寝台特急用客車である24系と連結して運用された珍しいケースもありました。

多客期には臨時列車としても重用され、特に注目すべきは、高崎線や上越線でEF58 61号機やD51 498号機といった著名な機関車が、また磐越西線ではC57 180号機が牽引を担当した実績があることです。

しかし、登場から時が経ち老朽化が進んだこと、また機関車による牽引が電化区間での運用効率低下に繋がることなどから、後継となる485系電車改造の「彩（いろどり）」が登場しました。そして、「浪漫」は2007年3月2日から4日にかけて運転された「長野地区鉄道車両整備号」をもってその営業運転を終了し、同年同月中に解体され、その歴史に幕を閉じました。

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