浪漫の騎士

『浪漫の騎士』（Romantic Warrior）は、フュージョンバンド、リターン・トゥ・フォーエヴァーが1976年に発表した6枚目のスタジオアルバムです。本作は、Billboard 200で35位、ジャズ・チャートで3位、R&Bチャートで23位を獲得し、バンドにとって最高のセールスを記録しました。

このアルバムは、コロムビア・レコード移籍後初の作品であり、それが売上増加の一因になったと考えられています。また、リターン・トゥ・フォーエヴァーにとって初のジャズ・ロックアルバムであり、ニューヨークのレコード・プラント・スタジオではなく、カリブ・ランチで録音された最初のアルバムでもあります。前作『ノー・ミステリー』と比較して、より前衛的でファンクの要素が薄れています。

アルバム全体を貫く中世的なテーマは、当時のプログレッシブ・ロックバンドが用いていたものと共通しており、高度な演奏技術が随所に散りばめられています。高速のユニゾンラインは、多くの楽曲で聴くことができます。

チック・コリアが最も長い楽曲を提供し、他のメンバーもそれぞれ1曲ずつ作曲しています。アルバムの幕開けを飾るコリアの「中世序曲」は、独特のメロディックなモチーフで、アルバム全体の雰囲気を決定づけています。レニー・ホワイトの「女魔術師」は、ファンキーなリフとコリアのシンセサイザーが印象的です。タイトル曲「浪漫の騎士」は、全編アコースティックで、長いイントロの後に短いテーマが続きます。各メンバー（ホワイトを除く）がソロを披露し、終盤には高速のユニゾンパターンが現れます。アル・ディ・メオラの「荘厳な舞踏」は、ロックのリフとディストーションギターに加え、高速のハープシコードのようなシンセサイザーが特徴的です。スタンリー・クラークの「手品師」は、複雑な構成を持ち、遊び心のあるメロディーと高速のユニゾンラインが印象的です。アルバムの最後を飾るコリアの「道化と暴君の決闘」は、アルバム中で最長の楽曲であり、メインテーマは伝統的なメロディですが、全体的には過去の楽曲のスタイルを踏襲しています。特に、コリアの卓越したキーボードソロは聴きどころです。

本作の発表後、コリアはバンドの方向性を転換することを決意し、クラークと共に新たなリターン・トゥ・フォーエヴァーを始動させました。

また、コリアは本作をサイエントロジー教会の創設者、L・ロン・ハバードに捧げています。

収録曲

1. 中世序曲 - "Medieval Overture" (Chick Corea) - 5:14
2. 女魔術師 - "Sorceress" (Lenny White) - 7:33
3. 浪漫の騎士 - "The Romantic Warrior" (C. Corea) - 10:50
4. 荘厳な舞踏 - "Majestic Dance" (Al Di Meola) - 5:00
5. 手品師 - "The Magician" (Stanley Clarke) - 5:27
6. 道化と暴君の決闘（パートI, II） - "Duel of the Jester and the Tyrant" (Part I & Part II) (C. Corea) - 11:27

参加ミュージシャン

チック・コリア - ピアノ, ローズ・ピアノ, クラビネット, ミニ・モーグ, モーグ15, マイクロモーグ, ARPオデッセイ, オルガン, ポリモーグ, マリンバ, 打楽器
アル・ディ・メオラ - エレクトリック・ギター, アコースティック・ギター, ソプラノギター, ハンドベル, スライドホイッスル
スタンリー・クラーク - アレンビック・ベース（インスタント・フランジャー付）, ピッコロベース, コントラバス, ベル・ツリー, ハンドベル
レニー・ホワイト - ドラムス, ティンパニ, コンガ, ティンバレス, ハンドベル, スネアドラム, サスペンデッド・シンバル, 目覚し時計

その他

デニス・マッケイ - エンジニア＆リミックス
ウィルソン・マクリーン - カバーアート

関連項目

* 異邦の騎士…作中で御手洗潔が言及している。

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