束柱目

束柱目（そくちゅうもく）についての詳細

束柱目（Desmostylia）は、既に絶滅してしまった海棲哺乳類の一群で、漸新世後半のチャッティアン期から中新世後半のトートニアン期にかけて生息していました。この目に属する動物は、沿岸に生息した水陸両棲の草食性生物であったとされています。束柱目の名称は、彼らの非常に特徴的な臼歯に由来し、実際には円柱を束ねたような構造を持っています。

研究の歴史

束柱目の化石は、環太平洋地域、特に日本南部、ロシア、アリューシャン列島、さらに北アメリカ大陸の西海岸にかけて広がる範囲で発見されました。最初に発見された模式種Desmostylus hesperusは、1888年にオスニエル・チャールズ・マーシュによって、海牛目に分類されました。しかし、10年後に日本でより完全な化石が見つかると、その分類に疑問が寄せられるようになりました。

1898年、古生物学者の吉原重康と岩崎重三は、ヘンリー・フェアフィールド・オズボーンと共に、束柱目の初期のマストドン類との類似性について議論し、長鼻目起源説を提案しました。ジョン・C・メリアムは臼歯の構造に基づいて、デスモスチルスが水棲の動物であり、おそらく海牛目に属しているとの見解を示しました。一方で、他の研究者たちはその化石が限られていたため、単孔目に近い存在である可能性を考えていました。しかし1941年、樺太で発見された完全な骨格によって、彼らの身体構造がカバに似た四足歩行であることが明らかになり、1953年には新しい目として束柱目が正式に指定されました。

分類

束柱目は、さまざまな下位分類が存在し、主に以下の2つの科に分けられます。
1. デスモスチルス科（Desmostylidae）
- アショロア（Ashoroa）（後期漸新世）
- コルンワリウス（Cornwallius）（後期漸新世）
- デスモスチルス（Desmostylus）（前期 - 中期中新世）
2. パレオパラドキシア科（Paleoparadoxiidae）
- ベヘモトプス（Behemotops）（後期漸新世）
- パレオパラドキシア（Paleoparadoxia）（前期 - 中期中新世）

その他の現存の動物と比較すると、デスモスチルスはゾウやマナティーを除けば、特に似ている種は無いものの、より後期の種は水中生活に適した身体構造を持っていました。1971年にオレゴン州で新種のBehemotopsが発見された際、初期の束柱目が後期の種類に比べて長鼻目に似た顎の構造を持っていたことが判明しました。しかし海牛類や他の有蹄類との関係は依然として曖昧です。束柱目は、近蹄類に分類され、その中でもテティス獣類の一員と見なされています。

絶滅について

束柱目は、他の海棲哺乳類のように適応した一群ではあったものの、その生存期間は比較的短く、棲息域や種数も限られていました。彼らの絶滅理由は地球の寒冷化が進んだことに起因している可能性がありますが、明確な証拠はありません。ただし、研究の結果、束柱目と海牛類の間に競争関係があったことが示唆されています。北太平洋の海牛類が収束した食物源であるコンブに対して、束柱目は主に海草を食べており、そのために競争が影響したと考えられます。このような状況が、束柱目の減少と海牛類の多様性の増加に寄与したとされています。

束柱目は、古代の海棲草食動物として特異な存在であった一方で、他の水棲哺乳類との関わりを通じて進化の複雑な過程を示しており、絶滅の原因に関する研究は現在も続けられています。

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