清宮秀堅

清宮秀堅（せいみや ひでかた）は、文化6年（1809年）に生まれ、明治12年（1879年）に没した、幕末から明治期にかけての国学者です。彼は、清宮尚之（滄州）の子として、下総国香取郡佐原村（現在の千葉県香取市）に生を受けました。幼名は秀太郎、後に総三郎、利右衛門（9代目）と称し、号は棠陰（とういん）・縑浦漁者（けんぽぎょしゃ）を用いました。

清宮家は、佐原の有力者である伊能家との繋がりが深く、初代利右衛門が伊能家の猶子として迎えられたことから、その一族として扱われていました。そのため、伊能景晴や伊能穎則らと親交があり、幼少時に亡くなった伊能忠敬の家系再興にも尽力しました。しかし、清宮秀堅自身は幼くして両親を亡くし、祖母によって育てられました。父が残した多くの書物を独学で読み解き、後に久保木清淵や宮本茶村に師事しました。

成長した秀堅は、家業の立て直しに尽力し、27歳で佐原の名主（里正）に就任します。これは、代々名主を務めてきた伊能忠敬の家が断絶したことが背景にありました。その後、佐原の領主である旗本・津田氏の家政に関与し、名字帯刀を許されるなど、地域社会における重要な役割を担いました。

秀堅は、学問にも熱心で、30歳頃から地理書『下総旧事記考』の執筆を開始しました。この著作は、30年以上の歳月をかけて改訂を重ねられ、その過程で金石文や旧祠古刹の調査、古老からの聞き取りを基に、多くの著作を完成させました。明治時代に入ると、印旛県や新治県に召され、地理を講じました。新治県に編入された香取・海上・匝瑳の3郡の地誌を纏めた『三郡小誌』を編纂するなど、その知識と見識を活かしました。しかし、明治7年（1874年）に新治県の地誌編輯雇を辞し、佐原に戻りました。その後も、私財を投じて佐原周辺の道路整備に尽力し、地租改正や新田開発にも協力するなど、地域社会の発展に大きく貢献しました。

学者としては、本居宣長や頼山陽に私淑し、色川三中、藤森天山、大橋訥庵、塩谷宕陰、井上文雄、柳田正斎らと交流しました。著作には、『新撰年表』、『成田参詣記』、『地方新書』、『下総国図』、『北総詩誌』、『古学小伝』、『雲烟略伝』、『外史箚記』、『香取新志』、『三家文鈔』、『国体正論』、『三条余論』などがあります。これらの著作は、彼の学問に対する情熱と、幅広い知識を示すものです。

明治12年（1879年）、71歳でこの世を去りました。墓は、香取市の浄国寺にあります。清宮秀堅は、国学者としてだけでなく、地域社会に貢献した人物として、後世に名を残しています。

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