渡辺洋三

渡辺洋三について

渡辺洋三（わたなべ ようぞう、1921年11月21日 - 2006年11月8日）は、日本の著名な法学者です。東京大学名誉教授であり、法社会学、民法学、憲法学を専門としていました。特に、リベラルな立場から、日米安全保障条約体制や核兵器廃絶問題など、社会的な問題にも積極的に発言していました。

生涯

東京都出身。第一高等学校を経て、1942年に東京帝国大学法学部に入学。しかし、太平洋戦争の影響で1943年に学徒出陣し、ビルマやタイに派遣され、終戦後に捕虜として収容されるという経験をしました。1946年に復員し、東京大学に復学。1947年に卒業し、その後、東京都立大学の講師を務めました。

1954年には、青年法律家協会の設立に参画し、1958年には東京大学社会科学研究所の助教授に就任しました。1962年に法学博士号を取得（論文テーマは「農業水利権の研究」）。1966年には東京大学社会科学研究所の教授となり、1974年から1982年までは同研究所の所長を務めました。1982年に東京大学を定年退官し、帝京大学法学部の教授に就任。1997年に同大学を退職しました。

また、学会活動も活発に行っており、農業法学会理事（1955-2001年）、日本法社会学会理事（1970-1993年）、民主主義科学者協会法律部会理事長（1979-1993年）を歴任。日本学術会議会員（第8期から第12期）も務め、第12期には副会長も務めています。

2006年11月8日、大動脈瘤破裂のため逝去。享年84歳でした。

研究と業績

渡辺洋三の研究は、法社会学、民法学、憲法学と多岐にわたります。特に、法社会学の分野では、社会における法の役割や機能、社会と法との相互作用について深く考察しました。また、民法学においては、土地や財産に関する法制度について、その歴史的変遷や社会構造との関係を分析しました。さらに、憲法学においては、日本国憲法の理念や条文の解釈について、リベラルな立場から独自の主張を展開しました。

渡辺は、単に法解釈を行うだけでなく、社会全体の構造や問題意識を捉え、法を社会変革の視点から考察していました。その研究活動は、日本の法学研究に大きな影響を与え、多くの法学者や法律実務家に影響を与えました。

主な著書

渡辺洋三は、数多くの著書を執筆しています。以下はその一部です。

『農業水利権の研究』（東京大学出版会、1954年）
『法社会学と法解釈学』（岩波書店、1959年）
『法というものの考え方』(岩波新書、1959年)
『民法と特別法　第1　土地建物の法律制度』（東京大学出版会、1960-62年）
『政治と法の間　日本国憲法の十五年』（東京大学出版会・東大新書、1963年）
『憲法と現代法学』（岩波書店、1963年）
『安保体制と憲法』（労働旬報社、1965年）
『入門法社会学各論　第1　日本の社会と法（財産）』（日本評論社、1965年）
『憲法問題の考え方』（東京大学出版会・UP選書、1967年）
『日本における民主主義の状態』（岩波新書、1967年）
『大学改革と大学の自治』 （日本評論社、1971年）
『民主主義と憲法』（東京大学出版会、1971年）
『法社会学研究』東京大学出版会
1『現代国家と行政権』1972年
2『入会と法』1972年
3『農業と法』1972年
4『財産と法』1973年
5『家族と法』1973年
6『憲法と法社会学』1974年
7『法社会学の課題』1974年
8『現代法と法社会学』1981年
『現代法の構造』（岩波書店、1975年）
『土地と財産権』（岩波書店、1977年）
『憲法と国民生活』（東京大学出版会、1978年）
『法とは何か』岩波新書、1979年
『1980年代と憲法』（岩波書店、1981年）
『憲法のはなし』（新日本新書、1981年）
『私たちの人権宣言』（労働旬報社、1982年）
『現代日本社会と民主主義』岩波新書、1982年
『法社会学とマルクス主義法学』（日本評論社、1984年）
『財産権論』（一粒社、1985年）
『法を学ぶ』岩波新書、1986年
『地価はなぜ暴騰するか―土地政策に発送の転換を―』（岩波ブックレット、1987年）
『法と社会の昭和史』（岩波セミナーブックス、1988年）
『法社会学と法律学の接点』（日本評論社、1989年）
『法というものの考え方』（日本評論社、1989年）
『法律学への旅立ち―リーガル・マインドを求めて―』（岩波書店、1990年）
『日本社会はどこへ行くー批判的考察ー』（岩波新書、1990年）
渡辺洋三民主主義選集　労働旬報社
『戦後日本の民主主義』1991年
『日米安保体制と日本国憲法』1991年
『人権と市民的自由』1992年
『憲法と国連憲章　90年代のゆくえ』（岩波書店、1993年）
『日本国憲法の精神』（新日本新書、1993年）
『家族法を見直す』（岩波ブックレット、1994年）
『日本社会と家族』（労働旬報社、1994年）
『日本をどう変えていくのか　「改革」の時代を考える』（岩波新書、1996年）
『核・安保・沖縄　日本の政府は何をしてきたか』（岩波ブックレット、1996年）
『世界及び日本の情勢と民衆の視点』（日本評論社、1999年）
『社会と法の戦後史』（青木書店、2001年）
『現代日本社会と法ーある法学者の見た時代転換期ー』（旬報社、2004年）
『慣習的権利と所有権』北條浩,村田彰編　御茶の水書房　2009
* 『南方一年 ビルマ俘虜記』渡辺華子編　新生出版　2009


これらの著書を通して、渡辺は、法と社会の関係を多角的に捉え、現代社会における法的課題を深く考察しました。その研究は、現代社会における法学の重要性を示唆するものであり、日本の法学研究において重要な位置を占めています。

まとめ

渡辺洋三は、日本の法学界に大きな足跡を残した法学者です。法社会学、民法学、憲法学の分野で多くの業績を残し、社会的な問題にも積極的に関わりました。その思想と研究は、現代社会においても重要な意味を持ち続けています。

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