湛増

湛増（たんぞう）：熊野三山を束ねた社僧、激動の時代を生き抜く

湛増（1130年 - 1198年）は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての激動の時代に、熊野三山の社僧、21代熊野別当として活躍した人物です。18代別当湛快の次男として生まれ、源為義の娘である「たつたはらの女房」が妻の母にあたります。

生涯

平治元年（1159年）の平治の乱では、父湛快が平清盛方についたことで、平氏から多大な恩顧を受け、熊野別当家は田辺別当家としての政治的立場を強化し、勢力範囲を拡大しました。湛増自身も平氏との関係を深め、若い頃から京都と熊野を頻繁に行き来し、政治情勢に関する情報を収集。貴族や平氏との交流を深めました。

承安4年（1174年）には権別当に就任し、20代別当範智を補佐します。しかし、治承4年（1180年）に源行家の動きを察知すると、平氏方として源氏方の勢力と戦いますが敗北。その後、源頼朝が挙兵すると、源氏方に味方し、新宮別当家出身の行命や弟湛覚を追放しました。

元暦元年（1184年）に21代熊野別当に補任されます。源氏と平氏の間で揺れ動く熊野の人々をまとめ、新熊野十二所神社で紅白の闘鶏を行い、源氏につくことを決意。元暦2年（1185年）には、源義経の命を受け平氏追討使となり、熊野水軍を率いて壇ノ浦の戦いに参加。源氏方の勝利に大きく貢献しました。

これらの功績により、文治2年（1186年）には源頼朝から熊野別当知行の上総国畔蒜庄地頭職を認められました。文治3年（1187年）には法印に叙せられ、改めて熊野別当に補任。建久6年（1195年）には源頼朝と対面し、嫡男頼家に甲を献上し、罪を赦されました。建久9年（1198年）に69歳で死去。死後、墓堂がつくられ、家人が墓守を務めたと伝えられています。

湛増は、源平合戦という激動の時代において、熊野三山の勢力を維持し、源氏方の勝利に貢献した政治的手腕に長けた人物でした。また、武蔵坊弁慶の父であるという伝承も残されており、その生涯は多くの物語に彩られています。

湛増に関連する作品

テレビドラマ
義経（2005年、NHK大河ドラマ、演：原田芳雄）

参考文献

五来 重、1967、『熊野詣 - 三山信仰と文化』、淡交社
阪本 敏行、2005、『熊野三山と熊野別当』、清文堂出版 ISBN 4-7924-0587-4
高橋修、1995、「別当湛増と熊野水軍 - その政治史的考察」、『ヒストリア』（146号）
田辺商工会議所編、2009、『熊野地域文化検定テキストブック 熊野検定』 ISBN 978-4907841096

関連項目

治承・寿永の乱
熊野動乱
* 田部家

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