満洲国の経済

満洲国の経済

満洲国（現在の中国東北部）の経済は、1932年の建国から1945年までの期間、日本の影響下で大きく変貌を遂げました。満洲事変後、日本は統治機構を整備し、重工業への重点的な投資と、それに次ぐ農業投資を行いました。

経済建設の基本方針

1933年、「満洲経済調査会」が「満洲国経済建設綱要」を策定。無統制な資本主義経済の弊害を避け、国家統制による計画経済を目指しました。これは、当時世界恐慌の影響を受けずに重工業を成長させていたソ連型経済を参考にしたものです。金属、石油、兵器などの戦略物資は、満洲国と満鉄が出資する特殊法人による独占を認め、その他の産業でも一業一社主義を推進し、財閥の排除を図りました。

満洲国内の通貨統一のため、1932年には満洲中央銀行が設立され、満洲元が発行されました。

産業開発五カ年計画

1930年代後半、日本陸軍は満洲国における自立経済の確立と軍需産業の大規模な開発を企図。1936年の湯崗子会議で、「満洲産業開発五カ年計画」が決定され、軍需産業の確立、農産資源の増産、産業開発のための施設整備、20分野の重点開発目標に総額26億円が投資されることになりました。

しかし、1937年に日中戦争が勃発。計画は鉱工業生産を中心に大幅に増額修正され、約50億円規模となりました。自給自足経済の確立は困難となり、満洲国は日本への原材料供給基地としての役割を強めていくことになります。同年、鮎川義介率いる日本産業（後の日産コンツェルン）が本社を新京に移転し、満洲重工業開発として満洲国内の重工業・鉱業への投資を一元的に管理しました。

当初、満洲工業の中心は奉天と大連周辺に位置し、石油・石炭・大豆、鉄道部品、武器、航空機、リキュール、ビール、加工食品、ガソリン精製などが行われていました。その他、鞍山、沙河口、旅順、撫順、阜新などの都市も重要な拠点でした。日本海への輸出拠点として、朝鮮北部の雄基港、清津港、羅津港も利用されました。

貿易と投資

1931年、満洲の対日貿易は輸出額が輸入額を上回りました。投資額の半分から3分の2が大豆製品に、約10%ずつが石炭と鉄に充てられました。輸入品としては、綿、穀物の粉、粗鉄、工業原料などがありました。主要貿易国は中華民国と日本であり、ソ連への輸出も一部行われていました。

外国の実業家からは「日本州国」と揶揄されるほど、日本人の進出が目覚ましく、満鉄と満洲重工業開発が国内の主要産業を支配しました。鮎川義介は、投資機会をアメリカなどの外国に分配することを求めましたが、関東軍によって拒否されました。しかし、フォード・モーターやゼネラルモーターズなどのアメリカ企業、香港上海銀行やP&Oなどのイギリス企業をはじめとする各国の大手企業も満洲国内に支店を置き営業を行いました。

設立された主な企業

日本の投資により、以下のような企業が設立されました。

同和自動車工業株式会社（自動車・トラック製造）
満洲飛行機製造株式会社（エンジン・航空機製造）
奉天兵器廠（南部式自動拳銃製造）
昭和製鋼所（鞍山製鉄所を改名）
満洲工作機械
奉天造兵所
満洲航空株式会社
満洲中央銀行
南満洲鉄道（満鉄）

鉱物資源

満洲国は豊富な鉱物資源を有していました。

石炭: 撫順炭鉱は主要な石炭鉱床で、15km³の広さに10億トンの埋蔵量があると推定されていました。1907年から産出量は増加し、1934年には800万トンに達しました。1941年には200億トンの埋蔵量のうち、2,000万トンを産出しました。
石油: 撫順では、石炭からの蒸留によってガソリンが生産され、1941年には100万トンが生産されました。
鉄: 1930年代には鉄の生産量が増加し、遼寧省には10億トンの良質な鉄が眠っていました。
アルミニウム: 遼寧省のアルナイトがボーキサイトの主要な原料でした。
その他: 銅、マンガン、金、塩、アンチモンなども産出しました。

鉄鋼業の発展

1933年、鞍山での鉄の総精製量は43万トンでしたが、1941年には175万トンに増加しました。1942年の設備投資により、生産能力は340万トンまで向上しました。

その他の産業

1932年以降、農業用肥料、爆発物、工作機械、電気工学、重化学工業など、様々な分野で日本の投資が増加しました。都市部では、住宅や近代的なビルの建設が進みました。ドイツやイタリアの企業に加え、アメリカのフォード・モーターやゼネラルモーターズなども進出し、日米関係が悪化する1941年7月まで営業を続けました。

自由貿易地域と港

満洲国には、ロシアや米英独との貿易のために、自由貿易地域（チチハル、ハルビン、琿春）と自由港（営口、安東、大連、旅順）が設けられました。

1931年の日本の天然資源の自給率は約60％でした。

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