満済准后日記

満済准後日記について

『満済准後日記』、または『法身院准後記』は、室町時代前期に活躍した醍醐寺の座主である満済が著した日記です。この作品は、主に彼の日常生活や幕府における政治的な出来事を記録しており、当時の人々の生活や文化、政治の流れを知るための貴重な文献として位置づけられています。日記自体は自筆本が主に残されており、特に重要な文化財として評価されています。

日記の大部分が現存しており、応永18年（1411年）から応永30年（1423年）にかけて書かれた巻子本や冊子本が国立国会図書館や醍醐寺三宝院に保存されています。これらの資料は、室町時代の歴史的な背景を理解するために欠かせない資料とされています。特に、巻子本は当年の具注暦を使用し、簡潔に覚書的な内容が記されているのに対し、冊子本は白紙や反故文の裏面に詳細な記事を残しています。この差異は、満済が日記を進める過程で、徐々に内容が増えてきたことを示唆しています。

満済は将軍足利義持・義教の護持僧として近侍し、初期には禳災祈祷に関する記述が多く見られますが、次第に幕政に関与するようになると、政治や外交に関する記述が豊富になりました。特に彼は「黒衣の宰相」とも称され、幕府内外における政治的な機微を観察し、詳細に記録しています。彼は将軍と管領以下の大名との情報伝達の役割を果たし、当時の守護大名の動向を知る上での貴重な資料となっています。

満済の日記は、貞成親王の『看聞日記』と並ぶ重要な記録であり、両者は室町時代の情報を比較する上でも有用です。しかし、貞成親王は好奇心から噂話なども記録していたのに対し、満済は自制心を持ち、自己の目で見た事象や直接の経験に基づいた客観的な記述を心がけています。この自制的な態度は、彼の記録の信憑性を高め、歴史的資料としての価値を一層引き立てています。

さらに、満済はその時代の優れた学僧であり文化人でもあったため、政治から一般民衆に至るまで彼の考察や見識は広く受け入れられました。そのため、室町前期の年中行事や社会情勢、文化、思想を探求する上でも、彼の日記は貴重な資料とされます。

本書の刊本には、『京都帝国大学文科大学叢書4』や『続群書類従補遺1』といったものが存在しますが、特に後者は普及している一方で、誤字や脱字が散見されるという課題もあります。また、冊子本には840通余りの書状が含まれており、これらも『大日本古文書』醍醐寺文書別集として残されています。

このように『満済准後日記』は、室町時代の歴史を知る上で不可欠な資料であり、政治的な動向や文化的な特色を知るための重要な鍵となっています。

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