源俊頼

源俊頼：平安時代後期の歌壇を彩った貴族と歌人

源俊頼は、平安時代後期を代表する貴族であり、歌人として名高い人物です。宇多源氏の一族で、大納言源経信の三男として生まれました。従四位上・木工頭まで昇進し、宮廷歌壇の中枢で活躍しました。

華麗なる宮廷生活と歌への情熱

俊頼は若い頃、修理大夫橘俊綱の養子となった時期もありました。その才能は早くから開花し、堀河天皇の近習の楽人として仕え、承暦2年（1078年）に行われた『承暦内裏歌合』にも参加しています。承保4年（1077年）には右近衛少将に任じられ、その後10年近くその職務に就きました。応徳3年（1086年）には左京権大夫に転任しています。

その後、父・源経信が嘉保2年（1095年）大宰権帥に任じられると、俊頼も大宰府へ下向しますが、承徳元年（1097年）に父が亡くなると京へ戻りました。帰京後は、堀河院歌壇の中心人物として活躍、数々の歌合で作者や判者として参加し、『堀河院百首』の企画・推進にも尽力しました。

『金葉和歌集』撰集と歌風

俊頼の才能が最も輝いたのは、天治元年（1124年）白河法皇の命により藤原基俊と共に『金葉和歌集』の撰集に参加した時でしょう。この歌集の撰集を通して、俊頼は当時の歌壇を代表する歌人としての地位を確立しました。俊頼の歌風は革新的であり、従来の歌風にとらわれない斬新な表現が特徴的です。

長治2年（1105年）には従四位上・木工頭に叙任され、天仁3年（1110年）には越前介を兼任しました。天永2年（1111年）以降は散位となりました。没年は、大治4年（1129年）です。

代表歌と逸話

俊頼の代表歌として、小倉百人一首にも選ばれた以下の歌が有名です。

「うかりける人を初瀬の山おろしよ激しかれとは祈らぬものを」（『千載和歌集』恋二・707）
「山桜咲きそめしより久方の雲居に見ゆる滝の白糸」（『金葉和歌集』春・50）

興味深い逸話も伝わっています。『無名抄』に記されている歌会での出来事です。法性寺殿関白藤原忠通の邸宅で行われた歌会で、俊頼の歌に詠み人の名前が書かれていませんでした。しかし、俊頼は詠み上げた歌の中に自身の名前「としより」を巧みに織り込み、周囲を驚かせました。このエピソードは、俊頼の機知と才能を端的に示すものです。

俊頼の多才さ

俊頼は歌人としての名声が高いですが、実はそれだけではありません。『散木奇歌集』という家集や歌学書『俊頼髄脳』を著し、後世の歌人たちにも大きな影響を与えました。また、書家としても才能を発揮し、多くの古筆に俊頼の書と伝えられる作品が現存します。ただし、父や子である俊恵が能書家であったことから、俊頼の作品とされるものの真偽については議論があります。

多くの歌集への入集

俊頼の作品は、『金葉和歌集』をはじめとする多くの勅撰和歌集に収録され、『金葉和歌集』で35首、『千載和歌集』で52首と最多入集歌人の一人となりました。小倉百人一首にも2首が選定されており、その歌の質の高さがわかります。

まとめ

源俊頼は、優れた歌人であると同時に、宮廷で重要な役割を担った貴族でした。彼の革新的な歌風は、後の歌壇に大きな影響を与え、数々の歌集への入集は、その才能の高さを証明しています。彼の生涯と作品は、平安時代後期の文化を理解する上で欠かせない重要な要素と言えるでしょう。

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