源経信

源経信：平安時代後期の歌人、公卿

源経信（みなもと の つねのぶ）は、平安時代後期を代表する公家であり、優れた歌人としても知られています。宇多源氏の一族に生まれ、権中納言源道方の六男として誕生しました。最終官位は大納言にまで上り詰め、桂大納言の号で呼ばれることもありました。小倉百人一首では「大納言経信」として選出されています。

華麗なる経歴

経信の経歴は華々しく、順調な昇進の道を歩みました。長元3年（1030年）に叙爵を受けると、その後は三河権守、刑部少輔、少納言、左馬頭などを歴任。着実に官位を上げ、長久3年（1042年）には従四位下、永承8年（1053年）には正四位下に昇進します。

康平5年（1062年）には右中弁に抜擢されると、その後も権左中弁、蔵人頭兼右大弁と弁官として重要な地位を歴任。治暦3年（1067年）には参議となり、公卿の仲間入りを果たします。

参議に就任後も弁官を兼務する傍ら、後三条天皇の中宮・馨子内親王に仕え、中宮権大夫を務めました。この間、従三位、正三位、従二位と次々と昇叙され、承保2年（1075年）には権中納言に昇進。その後も権大納言を経て、寛治5年（1091年）には大納言の地位にまで上り詰めます。馨子内親王への仕えは20年以上に及び、その忠誠心は深く、皇后宮権大夫、皇后宮大夫を兼任しました。

寛治7年（1093年）に馨子内親王が亡くなると、翌年、79歳にして大宰権帥に任ぜられ、大宰府に赴任。永長2年（1097年）に82歳で任地にて亡くなりました。

多才多芸な人物像

経信は詩歌や管絃に優れ、有職故実にも通じていました。その多芸多才ぶりは、藤原公任に匹敵すると評されるほどでした。多くの歌合にも参加し、長久2年（1041年）の「祐子内親王家名所歌合」はその代表的な例です。

白河天皇からも重用された経信でしたが、天皇の近臣であった藤原通俊とは政治的にも歌壇的にも対立していました。当代一の歌人として名高い経信でしたが、通俊が撰した『後拾遺和歌集』に自身の歌が少なく、その選集に疑問を抱いた経信は『後拾遺問答』『難後拾遺』を著し、通俊の選集を批判しました。

経信の歌は、『後拾遺和歌集』をはじめとする勅撰和歌集に85首も入集しています。その歌風は歌題を正確に捉え、平明な表現で優れた声調を追求したものでした。家集『大納言経信集』、日記『帥記』も残されています。

小倉百人一首

小倉百人一首には、経信の次の歌が収められています。

71番　夕されば　門田の稲葉　おとづれて　芦のまろやに　秋風ぞ吹く（『金葉和歌集』）

興味深い逸話

経信に関する興味深い逸話も伝わっています。京の八条に住んでいた頃、月明かりの下で砧の音を聞き、その情景から歌を詠みました。すると、異形の者が漢詩を詠み返し、経信は八幡大菩薩に助けを求めたというものです。この逸話は、月岡芳年や歌川国芳らの浮世絵にも描かれています。

系譜と官歴

経信の父は源道方、母は源国盛の娘です。妻は源貞亮の娘で、複数の男子をもうけています。詳細な官歴は『公卿補任』に記録されています。

まとめ

源経信は、優れた歌人としてだけでなく、公家としての華麗な経歴と、数々の逸話、そして多才な才能で知られる、平安時代後期の重要な人物です。その生涯は、平安貴族の栄華と、歌人としての苦悩、そして時代背景を反映したドラマチックなものでした。彼の作品や逸話は、現代においても人々の心を捉え続けています。

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