潙山霊祐

潙山霊祐（いざん れいゆう）

潙山霊祐は、中国唐代の禅僧であり、潙仰宗の開祖として知られています。諡は大圓禅師。俗姓は趙氏。福州長渓県（現在の福建省寧徳市霞浦県）の出身です。彼の生涯は、禅の歴史において重要な位置を占めており、その教えは後世の禅宗に大きな影響を与えました。特に、その機転の利いた逸話は、禅の精神を象徴するものとして広く知られています。

生涯

潙山霊祐は、大暦6年（771年）に福州長渓県で生まれました。15歳で出家し、福州建善寺の法常律師のもとで剃髪、その後、杭州龍興寺で受戒し、経律を学びました。23歳で洪州に赴き、百丈懐海に師事し、その法を継承しました。百丈懐海は、当時、禅宗において非常に影響力のある禅僧でした。霊祐は、百丈のもとで禅の修行に励み、その教えを深く理解しました。百丈は、霊祐の才能を高く評価し、彼を後継者の一人として認めました。

元和15年（820年）頃、潙山密印寺（湖南省長沙市寧郷市潙山郷）に移り住み、多くの門弟を育成しました。潙山密印寺は、霊祐の指導のもと、禅宗の重要な拠点の一つとなりました。霊祐の教えは、実践的な禅であり、坐禅を通じて心の平静と悟りを目指すものでした。霊祐のもとには、多くの僧侶が集まり、その教えを受け継ぎました。特に、弟子の仰山慧寂は、霊祐の教えをさらに発展させ、後の潙仰宗を創設しました。

大中7年（853年）正月9日、霊祐は83歳で生涯を閉じました。法臘（出家してからの年数）は64年（または59年）とされています。諡号として大圓禅師が贈られ、塔は清浄塔と名付けられました。霊祐の死後も、その教えは潙仰宗として継承され、多くの人々に影響を与え続けました。

逸話

潙山霊祐の逸話として最も有名なのが、「浄瓶を蹴る」話です。百丈禅師が、霊祐と華林覚のどちらを潙山の開山にするかを決める際に、浄瓶を指して「この浄瓶を浄瓶と呼んではならないとしたら、何と呼ぶか」と問いかけました。華林覚は「木切れとは言えません」と答えましたが、霊祐は何も言わずに浄瓶を蹴り飛ばしてその場を立ち去りました。百丈禅師は、この霊祐の行動に満足し、彼を潙山の住持に任命したと伝えられています。この逸話は、言葉に捉われない禅の真髄を示すものとして、禅画の題材にもなっています。特に「潙山踢瓶図」は有名です。この逸話は、禅の教えが言葉や概念に縛られないことを示す象徴的なエピソードとして、今日まで語り継がれています。

伝記資料

潙山霊祐に関する主な伝記資料としては、『宋高僧伝』巻11「唐大潙山霊祐伝」や『景徳伝灯録』巻9「潭州潙山霊祐禅師」などがあります。これらの資料は、霊祐の生涯や思想を研究する上で重要な資料となっています。また、日本語の伝記としては、尾崎正善著『潙山―潙仰の教えとは何か』が参考になります。

脚注

(省略)

外部リンク

祖師図（霊雲観桃・潙山踢瓶・三平開胸・石鞏張弓） - 国立文化財機構

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