潙仰宗

潙仰宗（いぎょうしゅう）

潙仰宗は、中国で成立した禅宗の一派であり、禅宗五家（臨済宗、潙仰宗、雲門宗、曹洞宗、法眼宗）の一つに数えられます。

成立

禅宗は、初唐の頃に宗派としての形を整え始めました。その後、禅は神秀系統の北宗禅と、慧能系統の南宗禅に分かれました。潙仰宗は、南宗禅の流れを汲み、その法系は、慧能 - 南嶽懐譲 - 馬祖道一 - 百丈懐海へと繋がっています。

潙仰宗の開祖とされるのは、百丈懐海の弟子である潙山霊祐です。彼は、元和元年（806年）に潙山（現在の湖南省長沙市寧郷市潙山郷）において、独自の禅を提唱しました。さらに、その弟子である慧寂が、仰山（現在の江西省宜春市袁州区）に住み、師の教えを確立したことから、両者の住した山の名を取り、潙仰宗と称されるようになりました。

五代十国時代には、荊南や南唐で教線を広げました。慧寂の弟子である南塔光涌（850年 - 938年）や、西塔光穆、光涌を継いだ芭蕉慧清、さらに光穆の門弟である資福如宝らの名が知られています。しかし、五代十国の末頃には、次第に衰退していきました。

宗風

潙仰宗の宗風は、「方円黙契」と称されます。『法眼十規論』では、「谷の韻に応じるが如く、関の符を合するに似たり。規儀を差別すると雖も、かつ融会を礙ぐことなし」と述べられており、その調和を重視する姿勢が窺えます。また、『五家宗旨纂要』では「潙仰の宗風は、父子一家、師資唱和し、（中略）体用及び彰る」と述べられており、師弟間の密接な関係性を重視する宗風であったことがわかります。

その宗風は、黙照禅と呼ばれる曹洞宗と類似する点も見られますが、より身内的で、孤立的な性格があったと考えられています。この内向きな性質が、逆に災いし、同系統の臨済宗が隆盛するにつれて、潙仰宗は衰退していきました。宋代に至ると、遂には他の宗派に吸収同化されてしまったと考えられています。

まとめ

潙仰宗は、南宗禅の流れを汲み、潙山霊祐と仰山慧寂によって確立された禅宗の一派です。その宗風は、身内的で孤立的な性格を持ち、臨済宗の隆盛とともに衰退しました。

参考文献

* 伊吹敦『禅の歴史』（法藏館、2001年）ISBN 4-8318-5632-0

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