潮田登久子

潮田登久子：静物写真の探求者

潮田登久子（うしおだ とくこ、1940年 - ）は、日本の現代写真家として、東京を拠点に独自の視点で静物や風景を捉え続けています。彼女の作品は、身近なモチーフから深い物語性を引き出すことで、多くの人々を魅了してきました。

写真家としての出発

1940年に東京で生まれた潮田は、1960年に桑沢デザイン研究所に入学し、写真家としての道を歩み始めます。石元泰博や大辻清司といった著名な写真家の指導を受け、写真を学びました。石元の授業での課題がきっかけとなり、初めて一眼レフカメラを購入し、街の人々を撮影したことが、彼女の写真家としての原点となりました。

1963年に桑沢デザイン研究所を卒業後、1960年代から1970年代にかけて、新宿や上野でポートレートのシリーズを制作し、1976年には個展「微笑みの手錠」で発表しました。また、1966年から1978年まで、桑沢デザイン研究所と東京造形大学で写真講師を務め、後進の育成にも貢献しました。

冷蔵庫、そして本へ

1975年よりフリーランスの写真家として活動を開始した潮田は、1981年頃からライフワークとなる「冷蔵庫／ICE BOX」シリーズの撮影を開始します。これは、さまざまな家庭の冷蔵庫を正面から撮影したもので、冷蔵庫という日常的な存在を通して、それぞれの家庭の物語を浮かび上がらせる試みです。1992年に初めて作品が発表され、1996年には写真集として出版されました。

1995年、みすず書房旧社屋で置き去られた本に触発され、「本の景色／BIBLIOTHECA」シリーズの制作を開始します。図書館や古書店、個人宅などで、長い年月を経た本の佇まいを自然光で捉えたモノクロ写真で構成され、本そのものが持つ歴史や記憶、そして surrounding environment を写し出しています。このシリーズは2003年に個展で発表され、2016年から2017年にかけて『みすず書房旧社屋』、『先生のアトリエ』、『本の景色』の三部作として出版されました。

2018年には、『本の景色』で第37回土門拳賞を受賞。同年、日本写真協会賞作家賞、第34回写真の町東川賞国内作家賞を受賞するなど、数々の賞を受賞しています。

近年の活動

2022年2月には、約40年前に撮影された未発表作品をまとめた写真集『マイハズバンド』を出版。同年11月には、「Paris Photo–Aperture PhotoBook Awards」審査員特別賞を受賞するなど、近年も精力的に活動を続けています。

潮田登久子の作品は、スミス大学美術館や東京国立近代美術館など、国内外の多くの美術館に収蔵されており、その芸術性は高く評価されています。彼女の写真は、静物の中に潜む時間や記憶、そして人々の生活を静かに語りかけ、私たちに新たな視点を与え続けています。

夫である写真家の島尾伸三との共著も多数あり、中国の庶民生活や雑貨などを捉えた作品も発表しています。娘のしまおまほは漫画家、イラストレーターとして活躍しています。写真家一家としても知られています。

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