濱野彰親

濱野彰親（はまの あきちか、1926年5月8日 - 2020年8月3日）は、昭和から令和にかけて活躍した日本の挿絵画家です。本名は政雄（まさお）といいましたが、1968年に彰親に改名しました。日本出版美術家連盟の元会長であり、現在は名誉会員です。

濱野の作風は、鋭い感受性と深い観察眼に支えられたモノクロームの世界に特徴があります。その絵は、人間の本性をあぶり出し、小説の物語世界をより印象的に表現すると評されています。特に、人物の心理描写に優れており、作品に深みを与えています。

1926年、東京に生まれた濱野は、幼少期から芸術に触れる環境で育ちました。祖父は紙問屋を営み、父は掛け軸を製作していました。青山学院高等科を卒業後、鉄道省に入省しましたが、芸術への情熱を捨てきれず、日本美術学校油絵科（夜学部）に入学。戦時中は赤坂歩兵第三連隊に入隊するも、終戦を迎え、再び絵画の世界へと戻りました。

1946年、推理小説雑誌『トップ』で挿絵画家としてデビューして以来、新聞小説や大衆文芸雑誌を中心に活躍しました。1950年には、日本出版美術家連盟に最年少で参加。1954年には、若手挿絵画家たちと「挿美会」を結成し、挿絵の発展に尽力しました。1968年には、ペンネームを「彰親」に改め、松本清張、山崎豊子、火野葦平など、数多くの著名作家の作品の挿絵を手がけました。週刊誌や新聞などにも多数の連載を持ち、幅広い層の読者から支持を得ました。

1974年には『噂』さし絵賞、日本作家クラブ絵画賞を受賞、1975年には講談社出版文化賞（さしえ賞）を受賞するなど、その功績は高く評価されています。2001年から2017年まで、日本出版美術家連盟の会長を務め、業界の発展に貢献しました。2017年に同連盟が一般社団法人化した際には、名誉会員となっています。

2013年には、弥生美術館で「モノクロームへの眼差し -人間の本性を暴く-」と題した個展を開催。2012年には画集『濱野彰親挿絵原画集　モノクロームへの眼差し』が刊行され、その作品世界が広く紹介されました。

2020年8月3日、誤嚥性肺炎のため94歳で逝去。その生涯を挿絵画家として生き抜き、多くの人々に感動と影響を与えました。

主な挿絵作品には、松本清張の「黒革の手帖」や山崎豊子の「二つの祖国」などがあります。その他、火野葦平、池波正太郎、川上宗薫、菊村到、梶山季之、近藤啓太郎、黒岩重吾、三好徹、森村誠一、深田祐介、山村美紗、ねじめ正一、逢坂剛、津本陽、和久峻三、田辺聖子、夏樹静子など、多くの作家の作品を手がけました。特に、川上宗薫の作品では、その妖艶で耽美的な世界観をモノクロームで鮮やかに表現し、読者を魅了しました。

濱野彰親は、挿絵というジャンルにとどまらず、芸術家としての独自の地位を確立しました。その作品は、これからも多くの人々に愛され続けることでしょう。

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