瀧泉寺

瀧泉寺 (りゅうせんじ)

東京都目黒区下目黒に位置する瀧泉寺は、天台宗の寺院であり、山号は泰叡山（たいえいざん）です。この寺院の本尊は不動明王で、古くから「目黒不動尊」や「目黒不動」として親しまれています。また、江戸の三大不動の一つに数えられ、関東三十六不動の第18番札所としても知られています。地域名「目黒」は、この寺に由来するという説もあります。さらに、サツマイモの普及で知られる青木昆陽の墓が所在することでも有名です。

歴史

瀧泉寺の歴史は、平安時代に遡ります。寺伝によると、大同3年（808年）に、15歳の僧円仁が霊夢を見たことが寺の始まりです。そこで見た神人は青黒い顔に恐ろしい姿をしており、降魔の剣と縄を持っていました。その神人が「この地に私の迹を残し、国を鎮めたいと思っている。私を尊んで祈りを捧げる者には、願いを必ず叶える」と告げました。円仁はこの夢から覚めた後、その姿を彫刻し、不動明王を本尊として祀ることにしました。円仁が法具の独鈷を投じた場所からは泉が湧き出し、その名は「獨鈷の瀧」として名を遺しました。

その後、貞観2年（860年）には清和天皇から「泰叡」の勅額を賜り、以降この名称が寺の山号となりました。江戸時代に入ると、元和1年（1615年）に本堂が焼失したものの、寛永7年（1630年）に徳川家光の庇護を受けて53棟の伽藍が復興され、「目黒御殿」と称されるほど華麗に整備されました。家光は、目黒での鷹狩りの際に不動尊に祈願した結果、愛鷹が戻ってきたことに感動し、寺を篤く尊信したとの話が伝わります。

文化9年（1812年）には「江戸の三富」と呼ばれる富くじが行われ、境内の独鈷の滝は病気の治癒をもたらすという信仰がありました。江戸時代には多くの人々に親しまれ、行楽地として盛況を極め、周辺には飲食店や土産物屋が並び賑わいを見せていました。特に名物として筍を用いた筍飯や目黒飴が人気を集め、多くの参詣者を引き寄せました。

境内と主な施設

境内は二段構造となっており、仁王門のある平地と大本堂のある高台に分かれています。仁王門をくぐると、急な石段があり、左手には独鈷の滝、前不動堂、勢至堂が、右手には書院、地蔵堂、観音堂、阿弥陀堂が立ち並んでいます。

仁王門

仁王門は1962年に再建された朱塗りの楼門で、三間一戸の構造をしています。仁王門の前には平井権八と小紫を祀った比翼塚があります。

独鈷の滝

本堂へ続く急な石段の下には池があり、龍の口から水が噴出しています。こちらは円仁が独鈷を投げた場所で霊泉が湧き出たとされ、その水は今日まで枯れることはありません。

大本堂

急な石段を登った先に位置する大本堂は、昭和56年に再建された入母屋造の建築で、天井には著名な日本画家、川端龍子による「波涛龍図」が描かれています。

交通と行事

瀧泉寺へのアクセスは、東急目黒線の不動前駅から徒歩で約8分、山手線の目黒駅からも徒歩約13分です。毎月28日は縁日が行われ、特に賑わいます。

ゆかりのある著名人

寺には青木昆陽をはじめ、西郷隆盛や本居長世、北一輝など、多くの著名人が関連しています。特に青木昆陽の墓は国の史跡に指定されています。

瀧泉寺は歴史的な価値だけでなく、多くの文化財や行事、地元の人々による信仰の場として、今もなお重要な役割を果たしています。

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