瀬川昌也

瀬川昌也：小児神経学の発展に尽くした医学者

瀬川昌也（せがわ まさや）は、1936年6月4日に生まれ、2014年12月14日に亡くなった日本の医学者であり、小児科医、医学博士です。専門は小児神経学で、特に遺伝性ジストニアの研究と、発達障害児に対する薬物療法の分野で大きな功績を残しました。彼の名前は、自身が発見し報告した「瀬川病（Segawa Disease）」として後世に語り継がれています。

生涯と業績

瀬川昌也は、医学者の瀬川功の息子として東京に生まれました。1962年に東京大学医学部医学科を卒業後、同大学院に進み、1970年に医学博士号を取得しました。その後、1973年には、自身の病院である瀬川小児科病院を瀬川小児神経学クリニックと改称し、院長に就任しました。このクリニックは、現在は瀬川記念小児神経学クリニックとして、多くの患者の治療に当たっています。

瀬川の最も重要な業績の一つは、1972年に報告した「著明な日内変動を呈する遺伝性ジストニア（Hereditary progressive dystonia with marked diurnal fluctuation=HPD）」、通称「瀬川病」の発見です。この疾患は、ドーパミン産生に関わる遺伝子の変異が原因で発症するもので、症状が日によって変動するという特徴を持っています。この発見により、ジストニアの病態解明に大きく貢献し、治療法開発の道を拓きました。

1980年代には、自閉症スペクトラムなどの発達障害児に対する「少量L-ドパ療法」を提唱しました。これは、発達障害児における前頭葉症状やチックなどの運動症状が、ドパミン神経の活性低下と、それに対するドパミン受容体の過感受性に起因するという仮説に基づいています。少量L-ドパ療法は、ドパミン神経を抑制することなく、受容体の過感受性を改善させることを目的とした治療法です。この療法は、多くの発達障害児の症状改善に貢献しました。

また、瀬川は睡眠と子どもの発達に関する研究にも力を注ぎました。NHKのテレビ番組『クローズアップ現代』にゲスト出演し、子どもの夜更かしがもたらす悪影響について注意を促すなど、啓発活動にも積極的に取り組みました。

瀬川は、獨協医科大学特任教授、日本小児神経学会理事、日本睡眠科学研究所顧問など、数多くの要職を歴任し、小児神経学の発展に尽力しました。教育者としても、東京大学、岩手医科大学、東邦大学、順天堂大学で講師を務め、後進の育成にも貢献しました。

家族と親族

瀬川家は、医学界で活躍する人物を多く輩出している家系です。曾祖父の瀬川昌耆は医学博士であり、瀬川小児科病院の初代院長を務めました。また、曾祖父の古市公威は男爵であり、工学博士でした。祖父の瀬川昌世も医学博士で、瀬川小児科病院の二代目院長を務めました。父の瀬川功は、瀬川小児科病院の三代目院長でした。義父には、三井不動産の会長を務めた江戸英雄がいます。

妻の江戸純子は、ヴィオラ奏者です。弟には、（株）美味と健康の顧問である瀬川昌威と、（株）昌平不動産総合研究所の社長である瀬川昌輝がいます。長男の瀬川昌巳は小児科医、長女の瀬川祥子はヴァイオリニストとして活躍しています。

著作物

瀬川は、その研究成果や臨床経験に基づいた著作物も数多く発表しました。主な著作物としては、『幼児の眠りの調整』（1999年）、『ヒトの脳の発達とアミン系神経系』（2001年）、共著として『「早起き」は生きる力!?脳がよろこぶ!元気になる!』（2007年）などがあります。また、博士論文として、『先天型筋ジストロフィー症(顔面筋罹患、中枢神経障害を伴う関節拘縮型先天型筋ジストロフィー症)の研究』（1970年）があります。

晩年

2014年3月には、少量L-ドパ療法研究会主催の第1回「乳幼児のアミン系神経を考える研究会」で基調講演を行いましたが、同年12月14日、悪性リンパ腫のため78歳で亡くなりました。

瀬川昌也の業績は、小児神経学の発展に大きな影響を与え、彼の研究は、現在も多くの医師や研究者に受け継がれています。

外部リンク

瀬川記念小児神経学クリニック
瀬川昌也先生を偲んで - 子どもの早起きをすすめる会

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