瀬川菊之丞 (2代目)

二代目瀬川菊之丞（せがわ きくのじょう）は、寛保元年（1741年）に生まれ、安永2年（1773年）に33歳で没した、江戸時代中期に活躍した歌舞伎役者です。女形としてその才能を発揮し、当時の江戸の観客を魅了しました。屋号は濱村屋、俳名（俳号）は路考（ろこう）といい、「王子路考（おうじろこう）」の通称でも知られています。

生い立ちと役者としての出発

二代目菊之丞は、武蔵国（現在の東京都、埼玉県の一部）の王子村の裕福な農家、清水半六の子として生まれ、幼名を徳次（とくじ）と名乗りました。5歳の時に初代瀬川菊之丞の養子となり、瀬川権次郎（せがわ ごんじろう）を名乗ります。その後、寛延3年（1750年）9月には二代目瀬川吉次（せがわ きちじ）を襲名し、中村座で養父の一周忌追善として『石橋』の所作を演じ、初舞台を踏みました。

二代目瀬川菊之丞の襲名と活躍

宝暦6年（1756年）11月、市村座の顔見世興行で、初代菊之丞が演じた『百千鳥娘道成寺』（ももちどりむすめどうじょうじ）を披露し、二代目瀬川菊之丞を襲名しました。この襲名によって、二代目菊之丞は若女形の筆頭としての地位を確立しました。彼は、その美しい容姿に加えて、卓越した演技力で時代物、世話物を得意とし、観客を魅了しました。

『鷺娘』の初演と流行の創造

二代目菊之丞の功績として特筆すべきは、現在の歌舞伎や日本舞踊で人気の演目の一つである『鷺娘』（さぎむすめ）を初演したことです。この演目は彼の代表作となり、今日まで多くの人々に愛されています。ただし、初演当時の振り付けは残念ながら現代には伝わっていません。
また、二代目菊之丞の人気は非常に高く、彼の名にちなんだ「路考髷（ろこうまげ）」や「路考茶（ろこうちゃ）」「路考櫛（ろこうぐし）」といったものが庶民の間で流行しました。これは、彼が当時の文化やファッションに大きな影響を与えたことを示しています。

平賀源内との関係

二代目菊之丞は、男色家として知られる平賀源内（ひらが げんない）との親密な関係があったことも有名です。この関係は、当時の文化人たちの間でも話題となり、二代目菊之丞の人物像を語る上で欠かせないエピソードとなっています。

参考文献

野島寿三郎編　『歌舞伎人名事典』（新訂増補）　日外アソシエーツ、2002年

関連項目

歌舞伎
女形
平賀源内

もう一度検索