火まつり (映画)

映画『火まつり』詳細解説

概要

『火まつり』は、1985年に公開された柳町光男監督による日本映画です。舞台は三重県熊野市の二木島町。中上健次が脚本を手掛け、古代神話が色濃く残る熊野を舞台に、人間の欲望や狂気を描いた作品です。この映画は、1980年に実際に起こった熊野一族7人殺害事件をモデルにしており、その衝撃的な内容から公開当時大きな話題を呼びました。

あらすじ

物語は、深い山と海に囲まれた二木島町を舞台に展開します。この町では、リゾート開発計画が進められており、町は二分されていました。主人公は、樵（きこり）の達男（北大路欣也）。彼は海に面した家に住み、開発の中心地となる場所の買収対象となっていましたが、開発には全く興味を示しませんでした。達男は、漁師たちからは「山の者」として疎まれていましたが、漁師のトシオ（安岡力也）だけは彼を慕い、行動を共にしていました。

そんな中、新宮の町からホステスの基視子（太地喜和子）が、姉を頼ってこの町にやってきます。達男は妻子持ちでありながら、基視子と深い仲になります。達男は、山の神々を自分の彼女だと豪語するような奔放な人物で、基視子はそんな彼に惹かれていました。しかし、基視子は借金のために他の男とも関係を持つような女性でした。

ある日、トシオの船で、達男たちは神聖な海域に侵入します。若者たちは単なる悪ふざけでしたが、達男は神妙な面持ちでした。また、山での作業中に大雨に見舞われた際、皆が下山する中、達男だけが山に残り、山の神と語り合います。伝統の火まつりでも、達男は異様な興奮を見せました。

開発に賛成する村人たちからの圧力は、達男の家族にも及びました。達男の母や姉たちが彼を説得しようと集まった席で、達男は猟銃を構え、家族全員を射殺し、自らも命を絶ちます。

登場人物

達男（演：北大路欣也）：主人公。樵（きこり）。
基視子（演：太地喜和子）：ホステス。達男と関係を持つ。
トシオ（演：安岡力也）：漁師。達男を慕っている。
達男の妻（演：宮下順子）：達男の妻。

スタッフ

監督：柳町光男
製作：清水一夫
脚本：中上健次
撮影：田村正毅
音楽：武満徹
美術：木村威夫

制作の背景

本作は、セゾングループの堤清二が出資し、柳町光男監督が自由に制作できるという条件で制作されました。監督の個性と才能が遺憾なく発揮された作品となっています。

受賞歴

第59回キネマ旬報ベスト・テン主演男優賞（北大路欣也）
毎日映画コンクール日本映画優秀賞

関連出版

『火まつり』（山口昌男編、リブロポート、1985年）

映画のテーマと見どころ

『火まつり』は、開発という名の近代化の波に翻弄される地方の村を舞台に、人間の原始的な欲望や狂気を描いた作品です。中上健次による脚本は、古代神話と現代社会を巧みに融合させ、観る者を圧倒的な世界観に引き込みます。北大路欣也と太地喜和子の熱演も見どころの一つです。

モデルとなった事件

本作は、1980年に実際に起こった熊野一族7人殺害事件をモデルにしており、その衝撃的な内容から公開当時大きな話題を呼びました。映画では、事件の背景にある人間の複雑な心理や社会状況が、深く掘り下げられています。

関連情報

撮影協力：熊野市、新宮市
関連駅：二木島駅、新宮駅
関連神社：熊野速玉大社

外部リンク

熊野市
火まつり - 国立映画アーカイブ
火まつり - allcinema
火まつり - KINENOTE
* Himatsuri - IMDb

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