烏帽子岳 (鈴鹿山脈)

烏帽子岳（えぼしだけ）

烏帽子岳は、岐阜県大垣市と三重県いなべ市にまたがる鈴鹿山脈北部に位置する標高865mの山です。その山容が、昔の武士が被っていた「烏帽子」に似ていることから、その名が付けられました。また、その美しい姿から「美濃富士」とも呼ばれ、地元の人々に親しまれています。

歴史と伝説

平安時代末期には、熊坂長範という盗賊がこの山を拠点として旅人を襲ったという伝説が残っています。そのため、三重県では古くから「熊坂山」とも呼ばれていました。また、古くから北側の山麓は、大垣市上石津町から鈴鹿山脈の五僧峠を越えて滋賀県彦根市に至る重要な道でした。

地理と景観

以前の地形図には、山頂の西側に最高点である標高点972mの数値が表記されていましたが、現在は削除されています。山麓周辺には、かつて炭焼きが行われていた窯跡が残っており、かつての暮らしを偲ぶことができます。山麓の集落からは、その美しい三角錐の山容を望むことができ、その姿はまさに「美濃富士」と呼ぶにふさわしいものです。「冠橋付近から見た烏帽子岳」は、大垣市の景観遺産の一つに指定されています。

自然

山頂付近には、ツツジ科のホンシャクンゲやベニドウダンといった貴重な植物の群落があり、岐阜県自然環境保全条例により、北斜面の山域は「烏帽子岳自然環境保全地域」に指定されています。春にはイワウチワやカタクリなどの花が咲き、登山者を楽しませます。また、山頂からは、麓の上石津の集落や養老山地、伊勢湾などを見渡せる絶景が広がります。

登山

烏帽子岳には、いくつかの登山道が整備されており、初心者から上級者まで、それぞれの体力や経験に合わせて登山を楽しむことができます。

細野ルート

最も一般的なルートで、大垣市が整備した「烏帽子岳林間広場」が登山口となっています。林間広場から北西尾根を進み、途中から大岩コースと展望岩コースに分かれます。2009年に開設されたこのルートは、比較的歩きやすく、多くの人に利用されています。

北西尾根ルート

時山バンガロー村を起点とし、送電線巡視路を通って山頂を目指すルートです。途中にはホンシャクナゲの群生地があり、その美しい姿を楽しむことができます。また、最高点を通るのもこのルートの特徴です。

三国岳からの縦走ルート

各方面の登山口から三国岳を経由し、送電線巡視路を通って山頂を目指すルートです。三国岳付近は道が分かりにくく、アップダウンも多いため、ある程度の登山経験が必要です。稜線上の岩場からは、霊仙山や伊吹山の雄大な景色を望むことができます。

釣鐘谷からのルート

時山橋から釣鐘谷を通って山頂を目指すルートです。このルートは、利用者が少なく荒廃が進んでいるため、一般向けではありません。しかし、山頂直下の物見岩からは、北側の素晴らしい景色を望むことができます。途中には炭焼窯跡や最終の水場などがあります。

篠立からのルート

篠立から長楽寺を経由し、篠立林道を通って山頂を目指すルートです。途中、狗留尊岳を経由するルートもあり、長楽寺の参道では春にイカリソウの花を見ることができます。古田小学校方面から狗留尊岳に至るルートもあります。

植物

烏帽子岳の登山道では、イカリソウ、イワウチワ、カタクリ、ベニドウダン、ホンシャクナゲなどの花々を見ることができます。また、牧田川を挟んで東側にある養老山地の笙ヶ岳西山腹にも、ホンシャクナゲの自生地があり、国の天然記念物に指定されています。

周辺の山と河川

烏帽子岳は、鈴鹿山脈の北部の主稜線から東に派生する尾根上に位置しています。この尾根は、北側の牧田川と南側の員弁川の分水嶺となっています。山頂から南南東1.1kmの稜線上には、狗留尊岳があります。牧田川の支流である釣鐘谷や、員弁川の支流であるタカンス谷は、この山を源流としています。牧田川の源流には水嶺湖（東谷川・打上調整池）があり、員弁川の源流には中里ダムがあります。

交通・アクセス

烏帽子岳へのアクセスは、公共交通機関を利用する場合は、JR東海東海道本線の関ケ原駅や三岐鉄道三岐線の西藤原駅が最寄りの駅となります。車の場合は、名神高速道路の関ヶ原インターチェンジが最寄りのインターチェンジとなります。また、東山麓を国道365号、北山麓を岐阜県道・滋賀県道139号上石津多賀線が通っています。

まとめ

烏帽子岳は、その美しい山容、豊かな自然、そして歴史と伝説が織りなす魅力的な山です。登山道も整備されており、多くの人がその魅力を楽しむことができます。ぜひ一度、訪れてみてはいかがでしょうか。

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