無担保コール翌日物金利(TONA)とは
無
担保コール翌日物金利とは、日本の
金融機関が、コール市場という短期
金融市場で、無
担保で資金を借り入れ、翌日に返済する際に適用される金利のことです。特に、その加重平均値が重視されます。この金利は、短期
金融市場における金利指標の一つであり、
金融政策や市場動向を把握する上で重要な役割を果たします。
1985年7月に無
担保コール市場が創設されて以来、この金利は市場の動きを反映する指標として注目されてきました。
2016年12月28日には、
LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の公表停止に伴い、翌日物の無リスク金利として特定され、その際にはTONA(Tokyo Overnight Average rate)という名称で呼ばれるようになりました。
日本銀行の誘導目標としての役割
かつて、日本の
金融政策においては、
日本銀行が市中銀行へ資金を融通する際の公定歩合が
政策金利として重視されていました。しかし、
1994年10月17日の金利自由化以降、銀行の資金調達は短期
金融市場を介することが大半となり、無
担保コール翌日物金利が
政策金利としての役割を担うようになりました。つまり、
日本銀行は、この金利を操作することで市場介入を行うようになったのです。
その後、
2013年4月4日より、
日本銀行は操作目標を無
担保コール翌日物金利から
マネタリーベースへと変更しましたが、それ以前はこの金利が
金融政策の主要な指標として機能していたことは間違いありません。
なお、無
担保コール翌日物金利は、市場取引の実態として、たとえ金利自体がゼロでなくても、取引を仲介する短資会社への手数料を差し引くと、実質的な金利がほぼゼロになる場合もあります。
誘導目標の推移
日本銀行による無
担保コール翌日物金利の誘導目標は、時代によって変動しています。以下にその主な推移をまとめます。
1998年9月9日 - 0.25%
1999年2月15日 - 当初0.15%、その後0%程度(
ゼロ金利政策開始)
2000年8月11日 - 0.25%(ゼロ金利政策一時解除)
2001年2月28日 - 0.15%(
ゼロ金利政策再開)
2001年3月19日 - 誘導目標なし(事実上0%程度、量的金融緩和政策開始)
2006年3月9日 - 0%
2006年7月14日 - 0.25%(ゼロ金利政策解除)
2007年2月21日 - 0.5%
2008年10月31日 - 0.3%
2008年12月19日 - 0.1%(
ゼロ金利政策再開)
2010年10月5日 - 0.0~0.1%
2013年4月4日 - 誘導目標廃止(事実上0%程度、操作目標は
マネタリーベースへ変更)
2024年3月19日 - 0.0~0.1%程度
2024年8月1日 - 0.25%程度
2016年1月29日から2024年3月19日には、
マイナス金利付き量的・質的金融緩和(
マイナス金利政策)が導入され、無
担保コール翌日物金利がマイナスとなる時期もありました。
無担保コール翌日物金利を原商品とする金融商品
無
担保コール翌日物金利は、様々な金融商品の原資産として利用されています。
円翌日物金利スワップ(OIS): 日本円OISでは、日本銀行が公表する無担保コールO/N物レート(確報値)が用いられます。また、OISの実取引値や気配値から算出されるターム物金利(TORF)は、LIBOR廃止後の参照金利として利用されることになっています。OIS取引は流動性が低いという課題があるものの、貸出金利や金利デリバティブの参照指標として望ましいとされています。ISDA(国際スワップ・デリバティブ協会)では、後決め方式のTONAがLIBORのフォールバックレートとして指定されています。
SOFR/TONAベーシススワップ: 米ドルのSOFRと日本円のTONAの金利差を利用したベーシス・スワップも存在します。
無担保コールオーバーナイト金利先物(TONA先物): 大阪取引所や東京金融取引所では、TONA Average 3ヵ月複利を用いた無担保コールオーバーナイト3ヶ月金利先物が取引されています。
TONA複利関連指標
QUICK社は、TONAに関する以下の指標を公表しています。
TONA Averages: TONAを日次複利計算した金利で、期間は30日、90日、180日があります。
TONA Index: 2017年6月14日に100をTONAに投資した場合の資産価値を示す指標です。
関連項目
フェデラル・ファンド金利:アメリカ合衆国における翌日物短期融資の金利
日本の経済
政策金利
金融政策
マネタリーベース
ロンバート型貸出制度
参照
コール市場関連統計(毎営業日) -
日本銀行
コールレート(月次) - 主要時系列統計データ表 - 日本銀行
TONA Averages & TONA Index -
QUICK