照山周暠

照山周暠について

照山周暠（しょうざん しゅうこう）は、戦国時代の動乱期を生きた臨済宗の僧侶です。彼は室町幕府の血筋を引いており、12代将軍・足利義晴の末子として生まれました。兄には、13代将軍足利義輝と15代将軍足利義昭がおり、将軍兄弟の末弟にあたります。

生涯

天文14年（1545年）に誕生した周暠は、幼少の頃から仏門に入り、京都の相国寺の塔頭である鹿苑院の院主となりました。僧侶としての道を歩むことになった背景には、当時の社会情勢や足利家の状況があったと考えられます。

しかし、永禄8年（1565年）5月19日、兄である将軍・足利義輝が、三好義継、三好三人衆、松永久通らの手によって暗殺されるという悲劇（永禄の変）に見舞われます。この混乱の中、周暠もまた、京都から逃れようとしましたが、三好側の命令を受けた平田和泉守によって、逃走途中の路地で殺害されてしまいました。享年わずか21歳という若さでした。

この時、周暠に付き従っていた小姓は、主君の仇を討つべく、平田和泉守を討ち果たしたと伝えられています。

人物像と子孫に関する記録

『系図纂要』のような歴史資料においては、照山周暠の存在そのものが省かれているという事実があります。これは、彼の生涯が短く、政治的な影響力が小さかったためかもしれません。

しかし、徳島県那賀川町町史編纂室が発見した系図には、興味深い記述が見られます。この系図によれば、平島公方・足利義種（周暠の従兄弟にあたる足利義助の子）の妻である祐賀（平島義次の生母）は、周暠の孫であると記されています。この系図は、平島公方の子孫に伝わった中世・近世文書群『阿波足利家文書』の一つであり、祐賀には光義、秀景、朝能という三人の兄がいたことも記録されています。

さらに、光義は文禄・慶長の役で戦死したとされています。一方で、徳島県立文書館所蔵の『板東村近藤家文書』の記述から、阿波国出身で江戸時代初期に近畿で刑死したカトリック司祭ディオゴ結城（結城了雪）が、祐賀の兄であると推定されていましたが、発見された系図において、朝能が「結城喜太郎」と注釈されていることから、ディオゴ結城と同一人物である可能性が極めて高いと考えられています。

また、秀景は「近藤家文書」に現れる祐賀の近親者「兵庫」である可能性も指摘されています。これらの記録は、周暠の血筋が後世にどのように繋がっていたのか、また、戦国時代の混乱の中で人々の運命がどのように交錯していたのかを示す貴重な手がかりとなっています。

照山周暠は、その短い生涯において目立った活躍は記録されていませんが、足利将軍家の一員として、また、歴史の変動期を生きた人物として、後世にその名を残すことになりました。彼の生涯と子孫に関する記録は、歴史研究において、戦国時代の社会構造や人々の繋がりを考察する上で重要な資料となっています。

参考資料

奥野高広『足利義昭』（新装版）吉川弘文館〈人物叢書〉、1996年。
小林正信『明智光秀の乱 ―天正十年六月政変 織田政権の成立と崩壊』（新装改訂増補版）里文出版、2019年。
天野忠幸『三好一族―戦国最初の「天下人」』中央公論新社〈中公新書 2665〉、2021年。
山田康弘『足利義輝・義昭 天下諸侍、御主に候』ミネルヴァ書房〈ミネルヴァ日本評伝選〉、2019年。
平島公方史料集

関連項目

畿内・近国の戦国時代

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