松永久通

松永久通（まつながひさみち）：戦国を駆け抜けた武将の生涯

松永久通は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将で、松永久秀の嫡男として生まれました。父・久秀と共に戦国時代の激動を生き抜き、数々の戦いに身を投じましたが、最後は悲劇的な結末を迎えます。彼の生涯を詳細に見ていきましょう。

生い立ちと初期の活躍

天文12年（1543年）、久通は三好氏の家臣である松永久秀の嫡男として誕生しました。幼少の頃から父に従い、武将としての道を歩み始めます。永禄6年（1563年）には従五位下右衛門佐に叙位・任官し、同月に家督を譲り受け、大和多聞山城主となりました。この頃から、父・久秀の右腕として、数々の戦いに参加していきます。

三好氏の重臣として

永禄7年（1564年）には、主君である三好長慶の甥で養嗣子の三好義継に従い上洛し、室町幕府13代将軍・足利義輝と謁見しました。この際、義継は長慶の後継者としての地位を確固たるものとします。しかし、その直後、長慶が死去。義継が三好家の当主となります。

永禄8年（1565年）、久通は義継や三好長逸とともに上洛し、義輝に出仕。義継と共に偏諱を受け、「義久」と改名します。しかし、その直後に義継、長逸と共に一万余の軍勢を率いて再び上洛し、二条御所にいた義輝を襲撃、殺害するという「永禄の変」を引き起こします。その後、久通は名を義久から久通に戻します。

三好三人衆との対立

「永禄の変」後、松永久秀と長逸ら三好三人衆の間で内戦が勃発します。永禄9年（1566年）に父・久秀が姿を消すと、久通は多聞山城の守備を固め、父が復帰するまで三人衆方の筒井順慶と大和で戦いました。この間、彼は多聞山城を守り抜き、父の復帰を支えました。

織田信長との対決

永禄11年（1568年）、織田信長が足利義昭を奉じて上洛してくると、久通は父と共に義昭に帰参し、信長から大和支配を認められます。その後、筒井順慶から筒井城を奪い、その他の筒井方の城も攻略していきました。しかし、その後、久秀・久通父子は義昭幕府から離反し、信長と敵対する道を選びます。元亀2年（1571年）、久秀・久通は義継や三人衆らとともに義昭・信長方と戦いましたが、反義昭・反信長勢力が優勢となった元亀4年（1573年）には、義昭も信長を敵として挙兵します。しかし、義昭の挙兵は鎮圧され、若江城の義継も滅亡。多聞山城を攻められた久秀・久通は信長に降伏しました。

大和の動乱と最期

天正3年（1575年）、大和は塙直政と筒井順慶を中心に支配されることとなり、久通は十市遠勝の娘おなへを妻に迎え、龍王山城に移りました。その後、妻の一族である十市遠長を攻め、柳本城を落としました。しかし、原田直政が十市城を接収し、遠長が河内へ追放されると、大和の情勢は再び不安定になります。

天正4年（1576年）には石山本願寺攻め（石山合戦）に参加しますが、天王寺の戦いで直政が戦死。一時、久通も戦死したとの噂が流れました。その後、大和の支配は筒井順慶に任され、多聞山城は破却されることとなり、久通は解体に関わりました。

天正5年（1577年）、久秀・久通父子は本願寺攻めから離脱し、信貴山城に籠城します。織田軍の猛攻に耐えきれず、久通は柳本城で自害したとも、信貴山城で父・久秀と共に自害したとも伝えられています。また、信貴山城から脱出しようとして殺害されたという説もあります。いずれにしても、久通は信長との戦いの中で、壮絶な最期を遂げました。

子孫

一説には、久通の子に彦兵衛（一丸）がいたとされ、その子孫から海軍中将・松永貞市、海軍大尉・松永市郎、iモード開発者の松永真理が出たといわれています。

久通の生涯は、戦国時代の激しい動乱の中で、父と共に武将として生きた証であり、その名は歴史に刻まれています。

脚注

注釈

出典

参考文献

天野忠幸『松永久秀と下剋上室町の身分秩序を覆す』平凡社〈中世から近世へ〉、2018年。ISBN 978-4-582-47739-9。
谷口克広『信長と消えた家臣たち』中央公論新社〈中公新書〉、2007年。
長江正一『三好長慶』（新装版）吉川弘文館〈人物叢書〉、1989年4月（原著1968年）。ISBN 978-4-642-05154-5。
福島克彦『畿内・近国の戦国合戦』吉川弘文館〈戦争の日本史11〉、2009年。ISBN 978-4-642-06321-0。