熱風 (1943年の映画)

映画『熱風』について

『熱風』は、1943年（昭和18年）に東宝映画によって制作・公開された日本の国策映画です。戦時下の福岡県戸畑市、八幡市、小倉市に位置する八幡製鉄所を舞台に、増産を阻む「魔の溶鉱炉」に立ち向かう人々の姿を描いています。

あらすじ

物語は、製鉄課長の佐々木を中心に、監督員の菊地、「溶鉱炉の神様」と呼ばれるベテランの吉野らが集まり、職場会議が開かれる場面から始まります。議題は「第四溶鉱炉の能率引き上げ」でした。第四溶鉱炉は、低能率と事故の多発から「魔の溶鉱炉」と恐れられており、菊地は自らこの溶鉱炉の専任監督員に志願します。伍長には柴田健介が任命されます。

ある日、溶鉱炉が暴走し、工員が負傷する事故が発生しますが、柴田は身を挺して爆発の危険を未然に防ぎます。その後、柴田は新入社員の事務員、平沼久美子と出会います。久美子の父は第四溶鉱炉の事故で命を落としており、彼女は叔父である吉野の家に身を寄せています。久美子は同じ事務員の康子から指導を受けながら職場に馴染んでいきますが、柴田の厳しさには反感を抱いています。

工員の間にも柴田の強引な指導に対する不満が出始めます。新記録月間が迫る中、第四溶鉱炉は依然として低調な状態が続いていました。そんな中、久美子は菊地と海岸へ出かけます。一方、柴田への反感は強まる一方でしたが、柴田の真意を知り、皆は反省します。その様子を見ていた久美子も柴田に好意を抱き始めます。

工場では停電が発生し、送風機が停止。溶鉱炉の活動が停止してしまいます。最後の手段として、吉野はダイナマイトを仕掛けることを提案します。この危険な方法を巡り、柴田と菊地の意見が対立しますが、柴田と吉野は独断でこの方法を決行しようとします。しかし、連日の過労が原因で、吉野は作業中に誤って炉に落ちて殉職してしまいます。柴田は悲しみに打ちひしがれますが、久美子はそんな柴田を必死に励まし続けます。

菊地は「責任は自分が取る」と柴田に告げ、ダイナマイトを仕掛ける決断をします。決行の日、全員が見守る中、柴田が挿入したダイナマイトは見事に爆発し、作戦は成功しました。喜びのあまり、柴田は康子に駆け寄ります。その後、菊地の応召が発表され、歓喜の輪はそのまま彼の壮行会へと移っていくのでした。

キャスト

柴田健介（伍長工員）：藤田進
平沼久美子（事務員）：原節子
監督員・菊池：沼崎勲
康子：花井蘭子
吉野：菅井一郎
製鉄課長・佐々木：清水将夫
黒川弥太郎
進藤英太郎
清川荘司
高野由美

スタッフ

製作：松崎啓次
原作：岩下俊作
監督：山本薩夫
脚本：八住利雄・小森静雄
音楽：江文也
撮影：木塚誠一
特殊技術：円谷英二
照明：大沼正喜
美術：戸塚正夫
録音：安恵重遠

特筆事項

この映画は、実際の八幡製鉄所で長期ロケが行われたことでも知られています。また、特撮シーンでは、実物を綿密に再現したミニチュアの溶鉱炉が制作され、リアリティを追求した映像表現が用いられました。

参考文献

『東宝特撮映画全史』監修 田中友幸、東宝出版事業室、1983年12月10日。ISBN 4-924609-00-5。

外部リンク

熱風 - allcinema
熱風 - KINENOTE
作品詳細「熱風」｜日本映画写真のキネマ写真館

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