燃灯会

燃灯会（ヨンドゥンフェ）―朝鮮の伝統と祈りの灯火

燃灯会（ねんとうえ、ヨンドゥンフェ）は、朝鮮半島で旧暦4月8日に行われる、仏教の伝統的な法会です。夜空を彩る無数の提灯の灯火と、人々の祈りが一体となる壮大な祭りは、現代においても韓国の重要な文化行事として受け継がれています。

歴史と変遷

燃灯会の起源は、新羅の真興王12年（551年）にまで遡ると言われています。八関会と同時に始まり、高麗時代には重要な年中行事として定着しました。当初は旧暦1月14日（小会日）と15日（大会日）に行われ、華やかな祝宴と共に国家と王室の安泰が祈られました。

高麗時代を通じて、全国各地で盛大に行われていた燃灯会ですが、成宗時代に一時廃止された時期もありました。その後、顕宗時代に再開されたものの、契丹の侵入などの影響で、開催時期が旧暦1月15日と2月15日のどちらかとなるなど、変遷を繰り返しました。

靖宗4年（1038年）からは、国王が建国者である太祖の霊廟に参拝する慣習が加わり、政治的な意味合いも持つようになりました。恭愍王元年（1352年）からは、仏誕（旧暦4月8日）に宮中で供養が行われるようになり、この伝統は朝鮮王朝時代にも受け継がれました。

現代の燃灯会は、1954年に曹渓寺が太古寺から改名された翌年から始まった提灯行列が起源です。1996年には「燃灯祝祭」として文化行事となり、現在では、夜空に十万個以上の五色の提灯が灯る、大規模な祭典となっています。

由来と意義

燃灯会の中心となるのは、灯明を灯す行為です。仏陀の功徳を讃え、善行を積むための供養方法の一つとして、古くから「灯供養」は重要な儀式とされてきました。灯火は、無明を悟り、心を照らす象徴であり、『法華経』や『三国遺事』にもその功徳や意義が記されています。

重要無形文化財指定とユネスコ無形文化遺産登録

燃灯会の文化的価値を認め、曹渓宗など関係団体は、重要無形文化財への指定を働きかけました。しかし、歴史的考証や系譜に関する議論を経て、2012年3月30日にようやく指定されました。

その後、2012年にはユネスコ無形文化遺産への申請を行い、2020年に登録されました。ユネスコの評価では、燃灯会が時代を超えて受け継がれてきた包容性、国籍・人種・宗教・障害の垣根を越えた多様性、そして人々を結びつけ、喜びを分かち合う力などが高く評価されました。

結び

燃灯会は、単なる仏教行事にとどまらず、朝鮮の歴史と文化、そして人々の信仰が凝縮された、重要な伝統行事です。現代においても、人々の心を照らし、未来へと続く灯火として、その輝きを放ち続けています。数々の困難を乗り越え、ユネスコ無形文化遺産に登録された燃灯会は、これからも人々の心に温かい光を灯し続けることでしょう。

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