片倉喜多

片倉喜多（かたくら きた）

片倉喜多は、戦国時代から江戸時代初期にかけて活躍した女性で、伊達政宗の乳母として広く知られています。彼女は、天文7年（1538年）に伊達氏家臣である鬼庭良直の娘として誕生しました。幼名は喜多子、後に少納言とも呼ばれました。

生涯

喜多の父は鬼庭良直、母は本沢真直の娘である直子です。直子が産んだのは喜多のみで、男子には恵まれませんでした。その後、良直は側室との間に男児（後の鬼庭綱元）をもうけ、その男児を嫡男とするため側室を正室に迎え、直子と離縁しました。喜多は母と共に片倉景重に再嫁し、弘治3年（1557年）には異父弟である片倉景綱が誕生しました。

喜多は幼少の頃から文武両道に秀で、特に兵法書を好んで学んだとされています。その知識は弟の景綱にも大きな影響を与え、彼の成長を支えたと言われています。

永禄10年（1567年）、喜多は伊達輝宗の命により、生まれたばかりの伊達政宗の乳母に任命されました。ただし、実際には独身であったため、養育係としての役割を担ったと考えられています。記録には「保姆」と記されており、政宗の人格形成に大きな影響を与えたとされています。天正3年（1575年）には、弟の景綱も政宗の近侍として仕えるようになりました。

政宗が成長した後、喜多は正室である愛姫に仕えることになり、天正7年（1579年）に愛姫が輿入れしてからは、彼女の側近として仕えました。文禄3年（1594年）には、豊臣秀吉の人質となった愛姫と共に京都へ上洛し、伏見の伊達屋敷で奉公しました。喜多は秀吉にも謁見し、その才覚を認められて「少納言」の称号を授けられたとされています。

しかし、その後、喜多は政宗の怒りを買い、国許での蟄居を命じられました。一時的に弟の景綱が城代を務める佐沼城外に身を寄せましたが、後に亘理城外へ移り住みました。慶長7年（1602年）に景綱が白石城主となると、喜多も彼と共に白石へ移り住み、刈田郡蔵本邑勝坂に喜多庵を構えて余生を過ごしました。

慶長15年7月5日（1610年8月23日）、喜多は72歳で生涯を閉じました。墓は宮城県白石市の片倉家墓所にあり、戒名は円同院月隣妙華大姉です。

喜多の死後、愛姫の願いにより、伊達忠宗の命で、愛姫の従兄弟である田村宗顕の子である田村定広と田村男猿が喜多の名跡を継ぎ、片倉姓を名乗ることになりました。

逸話

片倉氏の旗指物として用いられた「黒釣鐘」は、喜多が考案したと伝えられています。この旗印は、現在、白石市の市章として採用されています。

また、歌舞伎『伽羅先代萩』に登場する乳母・政岡のモデルの一人として、喜多の名が挙げられています。

さらに、NHK大河ドラマ『独眼竜政宗』に喜多が登場したことで、彼女の知名度は全国的に広がりました。しかし、ドラマ放映以前から、喜多にあやかろうとする参拝客が、菩提寺にある彼女の墓石を少しずつ削り取って持ち帰るという現象が起こっていました。

脚注

注釈

喜多は乳母ではあるが、実際には養育係としての役割が強かったとされている。
「少納言」という称号は、秀吉が喜多の才覚を認めて与えたものと伝えられている。

出典

『伊達治家記録』
『白石市史』

参考文献

紫桃正隆『政宗をめぐる十人の女』宝文堂、1994年10月。ISBN 4-8323-0072-5。
仙臺市教育會 編『仙臺先哲偉人錄』仙臺市教育會、1938年10月30日。NCID BA53269868。

演じた人物

竹下景子 - NHK大河ドラマ『独眼竜政宗』（1987年）

外部リンク

喜多子 (きたこ) とは？ 意味や使い方 - コトバンク

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