片岡松燕

片岡松燕（かたおか しょうえん）

片岡松燕は、1895年2月15日に生まれ、1943年6月10日に亡くなった日本の俳優であり、元歌舞伎役者、元女形です。本名は加藤一（または加藤始）とされています。彼は、初代中村福圓と四代目片岡我童（後の十二代目片岡仁左衛門）に師事し、歌舞伎役者としてのキャリアをスタートさせました。その後、映画界に転向し、実弟である尾上華丈、尾上松葉らと共に、日活京都撮影所や自身のプロダクションで活躍しました。

生い立ちと歌舞伎役者としてのキャリア

片岡松燕は、兵庫県神戸市で生まれたとされていますが、一部資料では大阪府大阪市南区高津町が出生地であるとの記述もあります。実父は舞台の床山をしており、芸能に関わる環境で育ちました。5歳で初代中村福圓の門下に入り、神戸の大黒座で初舞台を踏みました。その後、尋常小学校に通いながら福圓と共に各地を巡業しました。1915年には、名女形として知られる四代目片岡我童の門下に移り、1917年に片岡松燕を襲名しました。以降、四世我童改め十二世仁左衛門と共に各地の舞台に出演しました。

映画界への転身と活躍

1920年、片岡松燕は十二世仁左衛門のもとを離れ、映画俳優の尾上松之助の誘いにより、日活京都撮影所に入社しました。同年公開のサイレント映画『尾張三郎丸 前篇』で映画デビューを果たし、女形俳優として活動を始めました。しかし、彼は他の女形専門の俳優とは異なり、『豪傑児雷也』での美青年役や『実録忠臣蔵』での大石主税役など、男性役も多く演じました。関東大震災後、女優が本格的に採用されるようになると、松燕は男優に転向し、二枚目俳優として活躍しました。

独立とプロダクション設立

1926年6月、片岡松燕は日活を円満退社し、同年10月には実業家・梅屋庄吉の支援を受け、片岡松燕プロダクションを設立しました。同年12月には、独立第一回作品となる映画『大望』を発表し、以降も複数の作品を製作・主演しましたが、間もなく同プロダクションは解散しました。

その後

片岡松燕は、プロダクション解散後は舞台での実演に転向し、宮戸座などに出演しました。しかし、その後も日活京都撮影所のトーキー作品に特別出演しており、映画への関わりを完全に絶ったわけではありませんでした。彼の趣味は墨絵と三味線で、鰻、中華料理、鮭、煙草を好んでいたとされています。1943年6月10日、48歳でその生涯を閉じました。

主なフィルモグラフィ

『豪傑児雷也』：1921年 - 高砂勇美之助役
『実録忠臣蔵』：1921年 - 大石主税役
『仮名手本忠臣蔵』：1921年 - 顔世御前役
『渋川伴五郎』：1922年
『実録忠臣蔵 天の巻 地の巻 人の巻』：1926年 - 神崎与五郎則休役
『大望』：1926年 - 矢部求女役
『恋の四千両』：1927年
『飛竜の剣』：1937年 - 将軍綱吉役
『血煙高田の馬場』：1937年 - 松平右京太夫役

関連人物

片岡仁左衛門 (12代目)
尾上松之助
片岡長正
牧野省三
池田富保
梅屋庄吉
尾上華丈
* 片岡栄二郎


片岡松燕は、歌舞伎役者としての伝統を重んじつつ、映画という新しいメディアでその才能を開花させた人物でした。彼の多彩な演技は、多くの観客を魅了し、その名前は映画史に刻まれています。

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