特殊銀行 (日本金融史)

特殊銀行とは

特殊銀行とは、戦前の日本において、特定の政策目的を達成するために設立された、政府系の金融機関を指します。これらの銀行は、長期にわたる設備投資、対外貿易、または併合地政策上の必要性から、特別な法律に基づいて設立されました。

特殊銀行の概要

特殊銀行は、以下の7行と、全国の府県に設置された農工銀行で構成されていました。

日本興業銀行（興銀）: 重化学工業の発展を支援。
日本勧業銀行（勧銀）: 農工業の発展に貢献。
横浜正金銀行: 国際金融を専門に担当。
北海道拓殖銀行（拓銀）: 北海道の開拓を経済面から援助。
朝鮮銀行（鮮銀）: 朝鮮半島の中央銀行としての役割を担う。
台湾銀行（台銀）: 台湾における金融を担当。
朝鮮殖産銀行（殖銀）: 朝鮮の農工業振興を目的とする。
農工銀行: 各府県に設置され、地域経済を支えた。

特殊銀行の特徴

特殊銀行には、以下の2つの大きな特徴がありました。

1. 法的根拠: 特定の法律を根拠として設立された一方で、商法に基づく株式会社としての側面も持っていました。
2. 資金調達と運用: 金融債を発行して資金を調達し、それを長期の投融資に活用していました。

戦後の再編

第二次世界大戦後、GHQによる占領政策の中で、特殊銀行は再編成を余儀なくされました。

日本興業銀行: 長期信用銀行として民営化されました。
日本勧業銀行と北海道拓殖銀行: 普通銀行として民営化され、一部は日本長期信用銀行に統合されました。
横浜正金銀行: 東京銀行に営業を譲渡しました。
その他の特殊銀行: 閉鎖機関令により解散・清算されました（農工銀行は戦前に日本勧業銀行に吸収合併されています）。

その後の動き

横浜正金銀行、朝鮮銀行、台湾銀行の清算後の残余財産を元に、以下の3社が設立されました。

日本中央地所（現・PHYLLITE）
日本不動産銀行（後の日本債券信用銀行、現・あおぞら銀行）
* 日本貿易信用（後の日貿信）

しかし、バブル経済崩壊後、これらの企業は経営難に陥り、日本債券信用銀行は一時国有化、日貿信は民事再生法を適用するなど、相次いで破綻しました。普通銀行として民営化された北海道拓殖銀行も1998年に破綻しました。その後、日本債券信用銀行はオリックスを中心とする投資グループの傘下で、あおぞら銀行として再出発しました。日貿信も民事再生手続きを完了しています。

特殊銀行は、戦前の日本の経済発展に大きく貢献しましたが、その後の経済情勢の変化に伴い、その役割を終えることになりました。

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