狩野内膳

狩野内膳（かのう ないぜん）

狩野内膳は、1570年元亀元年に生まれ、1616年元和2年に逝去した安土桃山時代および江戸時代初期の著名な絵師です。本名は重郷（しげさと）で、号は内膳、また久蔵や九蔵といった通称を持つことでも知られています。内膳は狩野派に属し、特に風俗画の分野でその優れた技量を発揮しました。

略歴

内膳は荒木村重の家臣として生まれることが伝えられています。一説によると池永重元の子とも考えられています。彼は天正6年（1578年）頃に根来寺の密厳院に入りますが、同じ年に父が仕えていた村重が織田信長に攻められ、内膳の家族は困難な状況に直面しました。その後、彼は還俗し、狩野松栄のもとで絵を学びます。天正15年（1587年）には、18歳で狩野氏を名乗ることが許され、豊臣秀吉に仕官しました。

内膳の運命は、彼の主家である根来寺が崩壊したことが大きく影響しているようです。彼は『丹青若木集』の中で「我が家の画工となるは頗る本意にあらず」と記しており、信長に滅ぼされた主家に仕方なしに絵師となったことが窺えます。

文禄元年（1592年）には狩野光信と共に肥前名護屋城で障壁画を手がけ、翌年には長崎に赴くことになります。この経験は後に「南蛮屏風」の精緻な風俗描写に良い影響を与えたと考えられています。

内膳は豊臣秀頼の指示で「家原寺縁起」を模写し、光信が他界した後は狩野孝信のもとで狩野派の中心的存在となります。慶長11年（1606年）には「豊国祭礼図屏風」を豊国神社へ奉納し、祭りでの民衆の姿を活写したこの作品は、豊臣秀吉の七回忌を記録したものです。対照的に、注文主の秀頼とその母淀殿の命により、高台院を醜い顔の老尼として描いたことがあり、その屏風は片桐且元を名目上の奉納者として豊国神社に公開されましたが、背景には淀殿の高台院への不快感があったことが伺えます。

大坂の陣により豊臣氏が滅亡した後、内膳は元和2年（1616年）に京都で亡くなりました。彼の教えは江戸時代にも受け継がれ、根岸御行松狩野家として幕末まで続いていきました。

内膳の弟子とされる岩佐又兵衛は、旧主の遺児であり、彼との関係は詳細にはわかっていませんが、内膳の影響を受けた可能性があります。また、同時代の画家、海北友松の影響も見受けられます。

代表作

内膳の代表作には「豊国祭礼図屏風」や「南蛮屏風」があり、いずれも日本の美術史において重要な位置を占めています。これらの作品は、彼の卓越した技術と風俗画の美しさを示しており、今もなお多くの人々に愛され、研究されています。

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