狩野光信

狩野光信（かのう みつのぶ）

狩野光信は、1565年に生まれ、1608年に亡くなった安土桃山時代の著名な狩野派の絵師である。彼は狩野永徳の長男であり、弟・孝信の子供である狩野探幽は甥に当たる。幼少の頃、彼は四郎次郎と名乗り、通称は右京進であった。後に彼の子である狩野貞信も右京進と名乗り、区別のため古右京とも呼ばれるようになった。

略歴

光信は山城国で生まれ、初めて織田信長に仕えた。早い段階で父の狩野永徳と共に安土城の障壁画を手掛け、その才能を発揮する。後に豊臣秀吉に仕官し、秀吉の画家として活動を行った。天正18年、父が亡くなった後には、山城国大原で知行を拝領し、狩野派の指導者となる。

天正20年には、肥後国名護屋城の美しい作品を制作し、その後も豊臣家に仕え続け、多忙な生活を送った。慶長8年には京都の徳川秀忠邸（二条城）で大内裏図を描き、慶長11年には江戸幕府の命により江戸城の障壁画に取り組んだ。しかし、彼は慶長13年に桑名で客死してしまい、享年は44または48であった。家督は長男の狩野貞信が引き継いだ。

作風と評価

狩野光信の作品は、父永徳の豪華絢爛なスタイルとは異なり、理知的で穏やかな雰囲気を持っていた。しかし、その作風は当時の戦国武将たちの趣向には合わないとされ、本朝画史でも「下手右京」と評され、評価が低い時代が長らく続いた。

とはいえ、光信は祖父の狩野松栄や曾祖父の狩野元信から引き継いだ技術を駆使し、中世の大和絵の要素を取り入れつつ、自然な奥行き感と繊細な木々や金雲を描く技術を磨いてきた。特に花鳥画に関する作品には秀でていた。

また、光信は永徳時代には一時的に排斥されていた長谷川派との親和も図り、新たな画題として風俗画にも挑むことで、永徳様式からの自立を目指し、絵画の新たな領域を開拓したことが評価される。

光信の画業を受け継いで発展させた弟子たちも多く、狩野長信や狩野興以、狩野甚之丞などがその代表である。光信のスタイルは、永徳から狩野探幽へと続く江戸狩野様式への橋渡しの役割を果たしたと言える。

代表作

光信の代表的な作品には、以下のような重要文化財が残されている。

• - 園城寺勧学院客殿一之間「滝図」「四季花木図」
• - 法然院障壁画
• - 妙法院玄関、大書院障壁画
• - 都久夫須麻神社障壁画
• - 豊臣秀吉像画稿
• - 豊臣秀吉像
• - 高台寺霊屋障壁画
• - 相国寺法堂天井画「蟠龍図」
• - 西王母・東方朔図屏風
• - 韃靼人狩猟図屏風
• - 肥前名護屋城図屏風

墓所

狩野光信の墓は、桑名市に指定された史跡である寿量寺と、京都の妙覚寺に所在している。彼の生涯と業は、後の絵画史において重要な位置を占め、多くの後継者を生んだ。

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