玉燭宝典

『玉燭宝典』について

『玉燭宝典』（ぎょくしょくほうてん）は、隋の時代に著された年中行事に関する漢籍であり、杜台卿によって編纂されました。この書物は全12巻から構成されていますが、巻9は残念ながら現存していません。中国では南宋の時代までは存在していましたが、それ以降は失われてしまい、現在では日本にのみその内容が残されています。このことから、『玉燭宝典』は貴重な文化的遺産と位置づけられています。

書物の概要

『玉燭宝典』は、古代から隋の時代にかけての年中行事をまとめたもので、各月に該当する行事を月令に沿って記述しています。日本に伝わる本では巻9を除く11巻が残っており、特に北方地域の民俗と行事に焦点が当てられています。一方で、南方の民俗文化を記録した『荊楚歳時記』と対照的な存在として評価されます。

各巻の終わりには、正説と附説が添えられており、誤った伝承を訂正したり、当時の習慣を紹介したりしています。書名の由来には、古典『爾雅』にある記述が影響を与えており、四季を象徴する色に関連しています。特に春夏秋冬の各季節はそれぞれ異なる象徴とつながっており、四季の和を示す言葉として「玉燭」が使われています。

作者とその意義

杜台卿は北斉出身の人物で、『隋書』によると、隋の開皇年間に『玉燭宝典』を進呈したとされています。このことから、この書物は実際には北斉時代においても存在した可能性が考えられます。また、杜台卿の甥に当たる杜公瞻も年中行事を取り扱った『荊楚歳時記』の編纂に関わったことから、杜家は当時の記録文化において重要な役割を果たしていたとされます。

この書物は多くの先行文献を引用しています。中にはすでに失われた後漢の崔寔による『四民月令』や、蔡邕の『月令章句』、西晋の周処による『風土記』なども含まれ、歴史的価値が高いです。

現存する版について

現在残されている『玉燭宝典』は、主に二つの版に分類されます。ひとつは、重要文化財に指定されている前田本であり、尊経閣文庫に保存されています。この本は貞和年間（1345-1350年）の写本で、本文の他にも紙背文書が含まれており、日本史において重要な資料とされています。1943年にはコロタイプ複製本が出版され、国立国会図書館デジタルコレクションでもオンラインで閲覧可能です。

もうひとつは、江戸時代に佐伯藩が前田本を写し取ったもので、毛利高翰が幕府に献上したものです。さらに、清末に発行された『古逸叢書』に収録されたことで、『玉燭宝典』は再び中国でも注目を集めました。

注釈と研究書

『玉燭宝典』についての研究としては、依田利用による『玉燭宝典攷証』があり、これには誤記の訂正や注釈が含まれています。これは『玉燭宝典』の理解を深める上で有益な資料です。

邦訳

日本においては、石川三佐男による訳本が1988年に出版され、広く読まれています。この本は、『中国古典新書続編 8』として明徳出版社から刊行され、ISBNは4896198085です。日本における『玉燭宝典』の知識の普及に寄与しています。

参考文献と外部リンク

『玉燭宝典』に関するさらに詳しい研究は、石川の著作や『秋田中国学会50周年記念論集』の中で確認できます。また、古逸叢書本のオンラインでの閲覧も可能です。興味のある方はぜひ、これらの資料を参照してください。

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