崔寔

崔寔（さい しょく）

崔寔（生没年不詳）は、後漢時代の政治家であり、学者としても知られています。彼の著作は現存していませんが、断片的な情報から当時の社会や政治状況を考察することができます。

生涯

崔寔は、幽州涿郡安平県の名家である崔家に生まれました。祖父の崔駰、父の崔瑗も文学者として高名であり、彼自身もその才能を受け継ぎました。桓帝の時代に郎官に挙げられ、議郎を経て外戚である梁冀の司馬となります。この時期には、『東観漢記』の編纂にも従事しました。その後、北方の五原太守に任じられ、住民に紡織を教えると共に、異民族の侵略に備えました。議郎に戻った後、梁冀が粛清された際に連座し、一時的に官職を離れることになります。しかし、鮮卑対策のために再び推薦され、遼東太守に任命されましたが、赴任途中に母が亡くなったため、喪に服すために帰郷しました。喪が明けた後、尚書に就任しますが、数ヶ月で病気を理由に辞任し、建寧年間に没しました。

書家としても知られ、父の崔瑗と共に草書に巧みでした。

著作

崔寔の著作として知られるのは、『四民月令』と『政論』です。

四民月令

『四民月令』は、『礼記』月令に倣い、各月ごとの年中行事を記した書物です。後漢時代の豪族の生活を知る上で重要な資料であり、月令類の代表的な書物の一つとされています。この書物は宋代に失われましたが、『斉民要術』や『玉燭宝典』などに引用された文章が残っています。渡部武による日本語訳が平凡社東洋文庫から刊行されています。

政論

『政論』は、刑罰と徳教を併用することで、当時の危機的な状況を克服しようとした書です。仲長統はこの書を高く評価しました。また、当時の豪族が巨額の富を築き、貧富の差が拡大している状況についても記しています。『隋書』経籍志では、この書を法家に分類しています。北宋時代には既に失われていましたが、『群書治要』や『意林』などに収録された文章が、『全上古三代秦漢三国六朝文』にまとめられています。後漢書の記述からは郎官時代の作品とも読めますが、厳可均は遼東太守就任後の作品であると指摘しています。

崔寔の思想と後漢社会

崔寔の思想は、現存する著作の断片から推測するしかありませんが、彼の政治観や社会観を垣間見ることができます。『政論』に見られるように、彼は当時の社会における貧富の格差や豪族の専横を問題視し、刑罰と徳教による社会秩序の維持を訴えました。また、『四民月令』からは、当時の農村社会における年中行事や生活様式を知ることができます。崔寔は、政治家として、学者として、そして書家として、多岐にわたる才能を発揮し、後漢社会に一定の影響を与えた人物であると言えるでしょう。

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